「スポーツへの風当たりが強い状況は残っている」。金メダリスト宇山賢が考えるフェンシング界の今後 (3ページ目)
――さまざまなデータを見て、どのような変化がありましたか?
「一番納得させられたのは、どんな質のアタックをしても、数字上は1回としてカウントされるという点ですかね。たとえば、『相手よりも先に前に出て仕掛ける』というプレーをしたとします。そこで100%の全力で飛び込んだ時も、カウンターを狙ってビビりながら前に出た時も、数字では同じ1回のアタックとしてカウントされるんですよ。
僕は、それがすごく悔しかった。きちんとカウントしてもらうために、しっかりアタックを打ちきる意識が芽生えました」
―――東京五輪での金メダル獲得により、男子エペ団体の主将を務めた見延和靖選手が、所属先のネクサス株式会社から1億円の報奨金を授与されたことも大きな話題になりましたね。
「ふだん、僕は三菱電機のショールーム兼イベント施設を運営する仕事に携わっています。そういった仕事の視点から、あのニュースの反響の大きさを見た時に『宣伝という点でも、すごい効果だな』などと考えてしまって(笑)。もちろんそんな狙いはなかったでしょうけど、思わず現実的な見方をしてしまいました」
――そのニュースだけでなく、フェンシング界は大きな注目を集めていますが、宇山さんが感じている今後の課題は?
「まずは、コロナ禍をどう乗り越えていくかだと思います。東京五輪の開催直前まで、『今回の五輪は、価値や意味すらも持たない』という論調も一部であったように、スポーツへの風当たりが強い状況は残っているように感じます。競技者が、スポーツのあり方や価値と向き合っていく姿勢が、より重要になっていくのかなと思います。
ポジティブな面としては、新しく会長に就任した武井壮さんが、老若男女の誰もが簡単にフェンシングを体験できるような試みを進めてくれています。多くの人に剣を使う楽しさを感じてもらえたらうれしいですね。
今後のフェンシングの普及、強化につなげていくという点では、フェンシング教室がまだまだ少ない。フェンシングは広いスペースが必要なので難しい部分もありますが、競技を体験できる場所を増やし、いい循環を生み出せたらいいなと思います」
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