連日PCR検査。世界選手権期間中も全員陰性の彗星ジャパンが得た手応え (4ページ目)

  • 田口有史●取材・文 text by Taguchi Yukihito
  • photo by Taguchi Yukihito/JHA(日本ハンドボール協会)

 土井は「スケジュールはわかっていたことですから言い訳にはなりません」と潔いが、正直、環境の変化などもあって選手たちの動きも重く、メインラウンドの今後に不安を感じさせる戦いだった。

 続くメインラウンド第2戦の相手はデンマーク。2016年リオデジャネイロ五輪、前回の世界選手権で金メダルの強豪で、ヨーロッパ主要リーグのトップクラブでプレーするスター選手を多く抱えるディフェンディングチャンピオンだ。

 アルゼンチン戦の戦いぶりもあって心配されたが、後半10分の時点で22対24と日本は食い下がる。しかし、パワーで勝る相手にディフェンスで劣勢に立たされ退場者が重なるなど徐々に引き離されると、最終的には27対34。それでも、全メンバーで出場時間を分けつつ、プレーの質を落とさずに27得点を挙げることができた。試合後、「誰が出てもするべきことの意識の統一ができていますから」とプレーメイカーの東江雄斗が語ったとおり、選手層が厚くなりつつあることを示す試合となった。

 今大会のラストゲームとなったメインラウンド最終戦は、バーレーンとの戦い。昨年のアジア選手権で2戦2勝だったが、2017年のダグル・シグルドソン監督就任後の通算成績は2勝3敗。東京五輪出場権を獲得しているアジア代表の国に対し、負けるわけにはいかない試合だった。序盤4対4の硬直状態も前半7分に岩下祐太のセーブから成田幸平の速攻の際にバーレーンの選手が反則で退場。数的優位となった日本はここで流れをつかみ、29対25で世界選手権メインラウンド初勝利を挙げて、大会を締めくくった。

「バブル」の中での世界選手権。帰国に際しPCR検査の陰性証明書が必要であることを1週間前から大会事務局に依頼していたが、結局直前まで用意されていなかった。国際ハンドボール連盟(IHF)のプロトコルと見比べて、厳重とは言えない運営だった印象は拭えない。大会期間中に他国の選手団の中から陽性反応者が出るなど、非常に難しい状況だった今大会にあって、彗星ジャパンは厳しい感染対策を継続。1カ月以上にわたって「全員陰性」を貫き通したことは一定の評価に値するのではないだろうか。

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