2020.12.10

岩田健太郎は東京五輪に不安。「できない基準が設定されていない」

  • 木村元彦●取材・文・写真 text & photo by Kimura Yukihiko

―― 過日、町田ゼルビアのランコ・ポポビッチ監督にヨーロッパサッカーシーンにおけるコロナ対策を聞いたのですが、そこは国ごとのメンタルの違いが大きいと言っていましたね。セルビアなどは自粛ではなく、罰則規定を設けないと、人々は守らないだろうということで、逆に言えば、それだけ真剣に制限を考えていたとも言えます。Jリーグで言えば、試合の特例ルールで変わりました。前後半の途中に給水タイムを設けるということになった。ノエビアスタジアムで実際に見てどう感じましたか。

「観戦していて思ったんですけど、給水タイムは今はあまり意味をなしてないと感じました。確かに最初はやむを得なかったと思います。そもそも選手たちが練習も規制された後でみんなコンディションが悪そうでしたし、夏の暑い時に、しかも週に2回とか超ハードなスケジュールだった時期があった。それこそ熱中症とかでもし熱が出たら、コロナと間違えて大混乱になる可能性さえある。

 あの時は、やはり水分を入れる休憩がないと選手が倒れてしまいそうだと思っていたんですけれども、今はもう、気温も下がって試合も比較的やりやすくなってきましたから、コロナ禍でも臨機応変に特例ルールを戻しても良いかと思います。給水タイムももはやハーフタイムの延長戦上みたいになって、戦術の確認や指示を出したりしていますね」

―― 来季においては給水タイムの取り込みについてはどう思いますか?

「来季はたぶんJリーグも試合間隔があくので、今年ほど(スケジュールは)詰め込みにはならないはずだと思います。だから、それに応じてということでしょうね」

―― アマチュアスポーツに眼を転じると、高校総体が中止、高校野球も甲子園が春も夏も中止になりました。これについてはどう思いますか。

「これは悩ましいところですけど。でも、高校スポーツそのものを考え直す時期だと思います。そもそも高校生が日本一になる甲子園大会というのが、負の側面が大きすぎると思うんです。それこそ真夏のど真ん中にエースピッチャーが完投、完投で肩を壊してまでやる。

 高校野球のナンバーワンを目指すのはまだ健全なんだけど、『甲子園一極』になると『甲子園以外は認めない』みたいになるじゃないですか。もう少し多極化すれば今年も大会ができたのかもしれないと思いますね。それを分散開催して、九州のナンバーワンを決めて、中国地方のナンバーワンを決めて、ブロックのトップを決めて、最後の決勝を甲子園でやっても別にいいと思うんです。そうすることで開催を実現できる。あとは、何といってもオリンピックですね」

―― IOCのトーマス・バッハ会長が来日して、中止の可能性については微塵も触れずに帰って行きました。来年、果たして本当に開催するのかという疑義はほとんどの人が持っています。

「先ほども言いましたけれど、Jリーグはルヴァンカップ決勝ですら、基準を満たさなければ中止とか延期にしますと発表する。やらない基準が明確だというのはすばらしいことで、それはクレディビリティ(信頼性)を高く保てるんですよね。そこまで果断ができれば信用できるということです。

 ところが東京五輪については、相変わらずそれが明示されない。根拠を何も示さずに、とにかくやる、やると言ったやると。日本あるあるの、『もう決めたことだから』という、一番ダメなものの決め方です。本当はリスクヘッジというものはあらゆる可能性をオープンにしておいて、状況に応じて対応するものですが、それがなくて議論はしないというのは、最低ですよ」

―― 選手の立場からすれば、なかなかネガティブな意見も出しにくいところかと思います。感染においてアスリートについて懸念していることはありますか。

「僕が一番心配しているのはパラリンピックです。オリンピックの場合は、アスリートは言っても健康な人たちなので、コロナにかかってもすぐ治るんです。阪神タイガースの選手たちもそうでしたよね。僕が気にしているのはパラリンピックの選手たちです。

 先天疾患とかで免疫異常のある選手もいるでしょうし、あるいはコロナのリスク回避ができないとか、いろんなハンディキャップをお持ちの方がいて、そういうコロナ禍でやるというのは相当なチャレンジだと思います。せめて分散してやるならともかく、今の段階ではそうでもない。

 例えばブラインドサッカーとかを集中してやるというのは、それをサポートするために、ものすごくたくさんのボランティアが必要になってくるじゃないですか。そうすると、当然密ができるというわけで、運営上もかなりハードルが高いと思います」