出世するたび「特殊」な状況になって嘆いていた魁聖に訪れたサプライズ (3ページ目)

  • 武田葉月●取材・構成 text&photo by Takeda Hazuki

 幕下には2年ちょっといました。転機になったのは、2009年秋場所、幕下46枚目で7戦全勝したことです。決定戦で負けちゃって、優勝はできなかったんだけど、この全勝で翌場所の番付が一気に6枚目まで上がった。

 これは、大きかったですね。おかげで、2010年は初場所(1月場所)から3場所連続で勝ち越して、名古屋場所での新十両昇進が決まりました。

 今までブラジル出身者は、ブラジルでお世話になった黒田吉信さんも含めて、何人か十両に上がっているんです。だから、僕のとりあえずの目標は十両昇進だったんですね。これで、「みんなに追いつけた!」ってうれしかったし、関取になったことで大部屋を出て、個室をいただいたこともよかった。

 ひとつ残念だったのは、十両に昇進した名古屋場所が角界の不祥事(野球賭博問題)で、NHKによる大相撲中継がなかったことです。新十両力士は、放送の中で「新十両紹介」というインタビューを受けるんですが、それもなし。だから、っていうわけじゃないけど、早く幕内に上がりたいという気持ちは強かったです。

 九州場所(11月場所)では十両優勝を果たして、「次の初場所、幕内に上がれるかな?」と期待していたけれど、東十両筆頭で止め置かれてしまって......。ちょっと腐りかけていたけど、最低でも8勝、「勝ち越せば、上に上がれるんだ」って気持ちを切り替えて、なんとか8勝したんです。

 春場所(3月場所)では、ついに幕内力士として土俵に上がる。ブラジルの人たちにも、テレビで見てもらえる!――そう思って心躍らせていました。

 ところが、八百長問題のため、2011年の春場所は中止となり、東京に居残っていた僕たちは、3月11日に東日本大震災に遭うのです。本当に大変な時期でした。世の中から、相撲という存在も忘れられているようでしたが、甚大な被害を考えれば、当然のことかもしれません。

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