金メダル獲得の原動力。
スピードスケート小平奈緒の一番の武器とは
コーチが語る小平奈緒の急成長(1)
今年2月に行なわれた平昌五輪で小平奈緒(相澤病院)は、500mで金メダル、1000mでは銀メダルを獲得した。長年のライバルであり、親友でもあるイ・サンファ(韓国)に勝った500mの試合では、決勝レースの後、泣き崩れるイを抱えながらこれまでの努力を労った。そのふたりの姿は美しく、多くの人の記憶に残っているだろう。
平昌五輪の500mのレース後、お互いの検討を称え合うイ・サンファと小平奈緒 そんな小平が中学時代から指導してもらうことを熱望し、信州大に進んだ05年から師弟関係を続けているのが、信州大教育学部教授の結城匡啓(ゆうき まさひろ)コーチだ。小平はコーチとの信頼関係について聞かれたとき、関係性を「信じているけど頼ってはいない存在」と話している。
結城コーチはその言葉を受けて「それが本当の信頼関係だと思います。スポーツは自分で考えるものだと思っているので、自得できる能力が世界一高い小平だからこそ、世界一になったのだと思う。そこに信じるものがあっても頼ってはいないという、微妙な感覚が彼女を支えている。そういう感覚が彼女の一番の武器だと思います」と分析した。
ふたりの13年間の歩みのなかで、今の活躍につながる大きな飛躍のきっかけとなったのは、14年ソチ五輪後に2年間、オランダに本拠地を移したことだ。その成果を結城はこう語る。
「オランダへ行く前から、自分たちは間違ったことはしていないという自信は持っていましたが、それをふたりで確信に変えられたと思います。あとは、オランダに行ってから小平自身が、本当の自主性に目覚めたのは大きかったのかなと思います。それまでも自主性がなかったわけではないですが、自分でやれることが増えたというか、メンタルの逞(たくま)しさが格段に上がった」
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