ボルダリング・ライバル物語「同い年のスター、楢崎智亜を追いかけて」 (3ページ目)

  • 津金壱郎●文 text by Tsugane Ichiro  佐野美樹●写真 photo by Sano Miki

 
「初めてのBWCで予選から飛ばして、準決勝では後半2課題は登れたけど、1、2課題目はまったく歯が立たなかった。その課題を智亜は全完。決勝を観客席で見ながら、あの舞台で活躍する智亜を、とても手の届かない遠い存在になったように感じていました」

 再び国際大会を戦う代表権を手にするために、石松は今年1月のBJCに意気込んで臨んだが、結果は15位。10位までに与えられるB代表権を逃し、「もう今年はどうしたらいいのか......」と途方に暮れた。その後、開催国枠に拾われてBWC八王子だけは出場できることになり、目標を決勝進出に切り替えた。BWCいずれかの大会で決勝に進出した選手は、翌年度のBJCで上位になれば、A代表の権利が得られるからだ。

「出場できると決まってからは思いつく練習は何でもやりました。それまでトレーニングは登り込むくらいだったけど、下半身の弱さを克服するためにスクワットをしたり。それがクライミングに本当に効果があるかはわからないけど、とにかくいろんな練習をやりました」

 今回のBWC八王子で、石松は目標通りに決勝に進出したが、これは決して容易なことではない。男子の出場選手84人のうち、準決勝に進めるのは20人。決勝に残れるのはわずか6人という狭き門だ。目標の舞台にたどり着くには、各国代表だけでなく、楢崎智亜を筆頭に、渡部桂太、藤井快、杉本怜、緒方良行、堀創などレベルが高く層の厚い日本勢を超えなければならない。BWCを1戦しか経験していない石松は、想像力を駆使してトレーニングに励んだことに加え、過去の大会を振り返り、メンタル面なども見つめ直したことが成果につながったと感じている。

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