全員カーリングで優勝の中部電力。五輪をかけLS北見と最終バトルへ (3ページ目)

  • 竹田聡一郎●取材・文・撮影 text&photo by Takeda Soichiro

 お互いの健闘をたたえる握手をLS北見の4人とかわすと、中部電力の面々はまず北澤が松村に抱きつき、そこに石郷岡が加わり、松村は頼れる後輩たちの肩を強く抱いて「よくばんばった」とねぎらった。

 それは、中部電力の躍進の理由を示す光景だった。

 松村は、今季について「とにかく(チーム内で)コミュニケーションを図ってきた」と振り返る。

 松村自身は主将の清水と、そしてこの日、対戦相手となったLS北見のスキップ・藤澤らとともに、2011年~2014年まで日本選手権4連覇を果たしている。ただその頃は、「お姉さんたちに、いかに迷惑をかけずにプレーするか、ということばかり考えていた」という。

 当時の中部電力は、藤澤という国内屈指の技術を持つスキップ中心のチームだったため、彼女にフィニッシュを託すようなセットアップが求められていた。世界を見渡してもスキップを中心とした強豪は多く、こうしたチームの強化方針はひとつの常套手段ではあったが、その分、当時のチームでは若い松村の発言が、ショットセレクションの決定に関わってくることはほとんどなかったと言っていい。

 その中部電力も、2013年秋の五輪トライアルで敗れてソチ五輪の出場を逃すと、翌春に主将の市川美余が退社。さらに、2015年の春にはスキップの藤澤がLS北見に移籍した。王座は北海道銀行やLS北見に移り、今や中部電力に対して「古豪」といったイメージを持つファンも増えていた。

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