東京五輪の新種目スポーツクライミング。W杯王者のいる日本は強豪国か (2ページ目)

  • 津金一郎●取材・文 text by Tsugane Ichiro
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 それが、である――。今年のボルダリングW杯では、日本男子がシリーズを通じて主役を演じたのだ。

 1月のボルダリング・ジャパンカップを初制覇した23歳の藤井快(ふじい・こころ)は、今季のW杯第2戦で3位となって初めて表彰台に登ると、第4戦のインド・ナビムンバイ大会で初優勝。第6戦アメリカ・ベイル大会で2勝目を飾り、ボルダリングW杯の年間ランクで2位となった。

 これは、2010年に堀が年間3位になって以来の快挙だが、楢崎智亜(ならさき・ともあ)がそれ以上の成績を残したことで霞(かす)んだ。楢崎は今季第3戦の中国・重慶大会で初優勝を飾るなど、優勝2回、2位3回の安定した成績を残し、日本人男子では初めてとなるボルダリングW杯の年間チャンピオンに輝いたのだ。

 2014年が年間26位、2015年が年間30位と、昨年までの楢崎は予選20位以内になった選手が進める準決勝ラウンドに残れるかどうかのレベル。それは今年の序盤戦も変わらず、W杯初戦は18位、第2戦は15位と、決勝進出にはほど遠かった。だが、なにかキッカケを掴むと短期間で大きな飛躍を遂げるのが、若さの特権である。楢崎にとってのそれは、W杯第2戦にあった。

 ボルダリングW杯としては7年ぶりの日本開催となった加須(かぞ)大会で、楢崎は準決勝4課題のうち1課題に完登(課題を登り切ること)したものの、ほかの3課題はすべてゴール取りで落下。その課題に手も足も出ずに決勝進出を逃したのなら、力不足とあきらめもついたかもしれないが、そうではなかったことで、楢崎に火がついた。

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