ひたむきな姿勢と緻密な作戦で、三宅宏実が「奇跡の銅メダル」 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by JMPA

 ところが、試合が始まるといきなり暗雲が立ち込めた。スナッチは81kgでスタートしたが、三宅が「1回目は全然取れる重さでないような感覚で失敗したので、『これはまずい』と思って」と言うように、2回連続で失敗と追い込まれた。開き直った3回目は、何とか差し挙げ、首の皮1枚で次へとつなげた。

「あの時は正直、私の夏はもう終わったと思いました。3本目を取れなかったら『これまでだったのかな』と思うしかないなと考えて。でも、最後は無心でトライして取ることが出来たので......あれは本当に奇跡ですね。挙げた瞬間はグラグラッとしたのを何とか抑えることができて、クリーン&ジャークにつながりました。不思議な3本目だったけど、きっとみんなが手伝ってくれたんだろうな、という気がしました」

 昨年の世界選手権のスタート重量は82kgだった。その重量から落としてスタートするのは久しぶりだったため、逆に緊張感が出て不安になったという。それが苦戦した大きな要因だった。

 81kgは挙げたものの、スナッチの順位は8位。世界選手権2位のテフエン・ブオン(ベトナム)が、84kgからスタートして一度も挙げられずに記録無しで競技を終えたことは三宅にとって有利だったが、メダルの遠さは変わらなかった。

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