【大相撲】人気回復の影に、相撲協会女性職員の奮闘あり! (2ページ目)

  • 福留崇広●文 text by Fukutome Takahiro
  • 織田桂子 ●写真 photo by Oda Keiko

 ここまでの道のりは、容易ではなかった。2010年の野球賭博問題、11年の八百長メール問題で大相撲の人気は地に落ちた。11年は春場所が中止に追い込まれ、夏場所は無料公開で技量審査場所としての開催を余儀なくされた。年4回ある地方巡業もすべて中止となり、この年、日本相撲協会は過去最大の約48億8600万円もの赤字を出す危機的状況に立たされた。

 北の湖理事長が3年半ぶりに協会トップに復帰したのは、まさにどん底に落ちた12年の初場所後だった。「ファンのみなさまが喜んでもらえることなら、何でもやろう」。これまでは、ファンサービスの面で動きが鈍かった相撲協会。協会トップが打ち出したオープンな方針で流れが変わった。

 当時、広報部長だった八角親方(元横綱・北勝海)と副部長の玉ノ井親方(元大関・栃東)が中心となりPRに尽力。これまでならオファーがあっても出演に消極的だったテレビのバラエティ番組にも積極的に力士が顔を出し、お茶の間と大相撲の距離を近づける努力を行なった。

 親方だけでない、職員も立ち上がった。業務推進室に在籍する加藤里実さん(31)もその一人だ。広報部にいた2012年、客離れが深刻な時だった。多くの人に国技館に戻ってきてもらうためにはどうしたらいいか、と頭を悩ませた。着目したのはツイッターだった。

 それまでも協会は公式ツイッターで情報を発信していたが、内容は日程の告知などが中心。いわば極めて事務的なもので、フォロワーも7000人ほどだった。そこで目標を打ち立てた。「1万人を目指したい」。告知だけで文字情報ばかりの内容の改善を考え「土俵以外での力士の姿を見せよう」と思い立った。当時、広報部長だった八角親方もそれを許可し、この年の9月場所から行動に移した。

 最初にやったことは、本場所中にたった一人でカメラを持ち、関取衆が場所入りする際の着物姿の撮影だった。「テレビで大相撲を見てくださる方は、基本的には土俵の上の姿しか知らない。だから、土俵以外の姿を見せたかった」。

 ツイッターにそれをアップするとフォロワーが着実に増えていく。本場所だけでなく巡業にも足を運び、力士の素顔をファンに提供した。目標の1万人は、2か月後に達成。

「自分一人で始めたことがこんなに早く目標が達成できるなんて想像以上。テレビでも紹介されて、ツイッターの認知度が高まっていき、大きな変化を感じました」と振り返る。

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