【月刊・白鵬】把瑠都、引退。横綱が最も強いと評した男の「泣き所」

  • 武田葉月●文 text&photo by Takeda Hazuki

子ども向けの本を出版した白鵬関。子ども向けの本を出版した白鵬関。第30回:把瑠都

9月場所が始まる直前、
把瑠都の引退が突然発表された。
彼の強さを常に公言していた横綱は、
一報を受けて、何を思ったのか――。

 大相撲秋場所(9月場所)が始まりました。今場所は、8月にジャカルタ(インドネシア)巡業などがあったため、初日(9月15日)を迎えたのがいつもより1週間ほど遅くなりましたが、多くのファンの方が国技館に足を運んでくれて、初日から大いに盛り上がっています。

 私にとっては4連覇のかかったこの場所。先場所で綱取りを逃した大関・稀勢の里の巻き返しなどが期待されますが、最大の注目は、やはり史上最短となる3場所で新入幕を果たした遠藤(東前頭13枚目)の動向でしょう。

 場所前に行なわれた横綱審議委員会稽古総見では、私も稽古相手に遠藤を指名。6番ほど相撲をとりました。勢いのある力士に対しては、自分自身の体を通して、その力を測っておきたい、という思いがあるからです。そして、実際に胸を合わせて、22歳の若手らしい"やる気"が十分に伝わってきました。

 ただし、幕内の力士は誰もが力を持っています。そう簡単に勝ち星を積み重ねられるものではありません。遠藤にとっては、厳しい状況に陥ることがあるかもしれませんが、将来が期待される力士ですから、そうした"壁"をひとつひとつ乗り越えていってもらいたいと思います。

 一方、秋場所直前には、寂しいニュースが飛び込んできました。「エストニアの怪人」と称された把瑠都が突然の引退を発表したのです。

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