【体操】『新戦力』田中理恵の誓い「(北京の)5位よりは上にいきたい」 (2ページ目)

  • 椎名桂子●文 text by Shiina Keiko
  • 藤田孝夫●写真 photo by Fujita Takao

 迎えた3種目目の平均台で、鶴見は緊張からかややぐらつきのある演技ながらもなんとかまとめた後、美濃部が自分でも「完璧でした」と言う思い切りのよい演技で14.900という高得点をマークし、一気に2位に浮上。新竹も、気落ちした様子を見せず、冷静で美しい演技を見せ踏ん張ると、平均台の最終演技者で、そこまで3位にいた笹田夏実(帝京高校)が、ジャンプのあとにバランスを崩し、台に手をつく大きなミス。12.500で6位に沈み、新竹は5位に上がった。

 最終種目のゆかでは、鶴見13.150、美濃部13.100と続いた後に登場した新竹が、会心の演技で13.450をマークし、後に演技する笹田に十分なプレッシャーをかける。ゆかが得意種目で前日には13.700を出している笹田には逆転のチャンスは残されていたが、緊張からかラインオーバーやふらつきもあり、13.250に終わり決着がついた。

 終わってみれば、サバイバルレースを繰り広げていたはずの3人は、美濃部2位、鶴見4位、新竹5位とそろって北京五輪に続いての代表入り。そこに初出場ながら2010年世界選手権ではロンジンエレガンス賞の受賞経験もある田中、伸び盛りの16歳・寺本が加わり、女子もかなりの強力布陣となった。

 シドニー、アテネと2大会連続で団体出場権すら失っていた体操女子だが、2007年の世界選手権で団体12位となり久々に北京五輪の団体出場権を獲得。さらに2008年の本番の北京五輪では団体5位と躍進している。今回は、昨年の世界選手権でも団体7位(予選時は5位)。確実に4年前より世界での位置は上がっている。

「団体決勝進出(8位以内)」で満足だった北京五輪とは、目標も意気込みも違ってくる。代表決定後の記者会見で、田中は、「ロンドンでは、5位よりは上にいきたい」と語った。その目標を達成するためには、今回の熾烈な代表決定戦で競り勝つ精神力の強さを見せつけた北京五輪経験者の3人は大きな力となるだろう。

 そして、五輪初出場となる田中、寺本は五輪という最高の舞台に立てたという喜びでよりのびやかにダイナミックに自分らしい演技をすることができれば、5位以上はもちろん、団体でのメダル獲得の可能性も見えてくる。体操は男子だけではない! 体操ニッポンの女子力にもおおいに期待したい。

2 / 2

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る