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羽生結弦が一時は諦めたソチ五輪の金メダル「五輪の本当の怖さを知った......」 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Toshimi Oriyama

【初の金メダル獲得も怖さを知った】

 2014年2月、初めての五輪。開会式前日から始まった五輪初採用のフィギュアスケート団体戦で羽生はSPに出場すると、最終滑走のプレッシャーのなかでノーミスの演技。羽生にとって「足が震えるような」憧れの存在であるエフゲニー・プルシェンコ(ロシア)や世界選手権3連覇中のチャンに大差をつけて1位と、好調ぶりを見せつけた。

 その勢いは1週間後の個人戦SPにもつながっていた。プルシェンコが腰の負傷で棄権するという想定外の出来事があったなか、羽生は「団体戦とは比べものにならないくらい緊張した」と言うが、最初の4回転トーループを決めると、自信を感じさせるノーミスの演技を披露。団体戦を上回る歴代世界最高得点の101.45点を叩き出した。

「一度調子が落ちて不安要素もあるなかで、前向きな気持ちを大事にしようとすごく意識しました。これまでやった演技よりよかったですが、100点超えができるとは自分でもあまり考えていなかった。それを五輪の舞台でできたのはすごくうれしいです」

 羽生のあとに滑ったチャンはトリプルアクセルの着氷が少し乱れて97点台にとどまり、羽生が首位発進。3位以下は3.5点差内に9選手がひしめく大混戦となったが、その最上位が86点台で、優勝争いは完全に羽生とチャンのふたりに絞られる形となった。

 翌日のフリーは最終グループの3番滑走だった羽生だが、「身体が全然動かなくて、6分間練習からすごく焦っていました」という。おかげで「どんな状態でも全力を尽くそうと努力をしていました」としながら、最初の4回転サルコウで転倒。次の4回転トーループはきれいに決めるも、3回転フリップで再度転倒する滑り出しとなった。

 演技の後半に入っても「体力がなくなって足が動かなくなり、マイナスな気持ちが出てしまった」と、予定していた3連続ジャンプは最後の3回転サルコウを跳べないミスも出て、フリーは自己最高得点を25点弱も下回る178.64点。合計280.09点で暫定1位にはなったが、羽生はその時点で「金メダルはダメだと思った」と一度は頂点に立つことを諦めていた。

 ところが、続くチャンも最初の4回転トーループ+3回転トーループを完璧に跳びながら、次の4回転トーループは手をつく着氷。トリプルアクセルでも大きく着氷を乱した。後半も不安定な滑りとなって合計は275.62点。世界王者にとっても五輪の金メダルを目前にしたプレッシャーは相当なものだったのだ。

 こうして、日本勢として男子シングル初の金メダルを獲得した羽生。「本当にびっくりしているとしか言いようがないです」と率直な感想を語った。自身のなかで成功率が高いと自負していた3回転フリップでもミスをした演技については、「はっきり言えば満足してない」と述べ、翌日の記者会見ではこう話した。

「昨夜のフリーでは五輪の本当の怖さを知ったし、五輪の重みというものを知った感じがしました。ただ、これが最後ではないし、まだまだ現役を続けていきたいと思っているので、これからも大好きなスケートとともに一生懸命頑張りたいと思っています」

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