羽生結弦を覚醒させた「誰かのために」の思い 五輪連覇の偉業への道のり (3ページ目)
【ライバルたちとの切磋琢磨で成長】
羽生は次の2012−2013シーズンへ向け、新たな決断をした。それは、それまで師事していた阿部奈々美コーチのもとを離れ、拠点をカナダに移してブライアン・オーサーの指導を受けるという挑戦だ。
その心中には女子のキム・ヨナ(韓国)ら多くのトップ選手を指導してきたオーサーへの期待とともに、大技の4回転サルコウをきれいに跳ぶフェルナンデスと一緒に練習し学びたいという思いもあった。羽生はそれまで、練習では4回転サルコウを跳べていたが、試合では組み込むことができていなかったからだ。
「カナダで最初にしたのは、エッジの乗り方などの地道な基本トレーニングでした。(2014年)ソチ五輪出場に向けてはジャンプも跳べなければいけないので、そのレベルも上げていきたいのですが、今は筋肉構造も頭のなかに入っているので、柔軟性を高めるためのストレッチにもハマり始めました」
新天地でそう語った羽生。フリーに4回転サルコウを入れたチャレンジのシーズンで、さらなる飛躍の時を迎えた。まず、GPシリーズ・アメリカ大会ではフリーで崩れて2位に終わったものの、SPで歴代世界最高得点をマークした。
続くNHK杯では、SPで歴代世界最高得点をさらに更新。フリーでは「最後に疲れが出てしまった」と後半の3回転ルッツとコンビネーションスピンで転倒しながらも、合計で自己ベストの261.03点を記録して優勝した。そして、2回目の出場となったGPファイナルはSPで3位発進。フリーではわずかなミスがあったが、合計264.29点と高橋に次ぐ総合2位となり、シーズン前に目標に掲げていた「GPシリーズ1位、GPファイナル表彰台」をクリアした。
ただし、羽生はその成績に満足することなく、「2014年のソチ五輪の目標が出場することだけだったら(GPファイナル)3位でもいいが、やっぱり(五輪で)優勝したいから、上の選手も近いうちに抜かなければいけないと思います。(高橋)大ちゃんはまだまだ強いけど、ソチまでには抜かなければいけない」と話していた。
そうして2012年12月、全日本選手権で初めての"高橋超え"も現実にした。SPはノーミスの演技で1位発進。フリーは最初の4回転トーループと4回転サルコウが耐える着氷になり、終盤も勢いに欠ける滑りで2位の得点だったが、高橋の追い上げをしのいで合計285.23点で初優勝を飾った。
無論、その結果にも羽生が慢心することはなかった。全日本選手権について「まだ体力が足りないという感覚がありました。ショートでいい演技ができたのが大きいけど、フリー2位は悔しい。高橋選手がショートでミスをしたからこの点差になりましたが、まだ僕自身の実力で高橋選手を抜いたという自信はないので、日々努力をしながらやらなければいけないことがあると思います」と振り返って、気持ちを引き締めた。
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