宇野昌磨と本田真凜のアイスダンスは今後の展開に期待 アイスショーでの溶け合うような演技で魅了 (2ページ目)
【ふたりの根底にある敬意】
本田もパートナーとして、その本質をリスペクトしているからこそ、足並みを合わせられるのだろう。昨年3月のインタビューで、本田に競技者としての宇野について尋ねたことがあった。
ーー宇野選手は、逆境を跳ね返すことによって、リンクで笑みを漏らす"王者の風格"を手に入れたように見えますが、いかがでしょうか?
本田は間髪入れずに答えていた。
「宇野選手以上に、スケートの試合に緊張しないという選手は他に見たことがありません。もちろん、いい意味で、です。スケートに取り組む姿勢は人一倍、熱い思いがあると感じるんですけど、試合の会場に入ってからはそういうのはまったく感じさせなくて。練習でここまでやってきたんだから、あとはどうなっても大丈夫と欲が出ない状態になっているんだと思います。それは、これまでの経験や実績に加え、宇野選手の強みだと感じます」
ふたりのダンスは、根底に敬意があるのかもしれない。その土台があるからこそ、日々成長できた。ふたりの切磋琢磨が表出していたのが、前半にそれぞれがソロで踊ったパートだ。
前半の見せ場、本田はソロで『天国の階段』をスパニッシュギターの哀愁に合わせて舞っている。タンゴのプログラムからの流れで、赤いドレスを身にまといながら、フラメンコの激情と高潔さを表現し、スパラルや指の動きの一つひとつに色気が漂わせている。そして宇野がケガを押した戦いで全日本選手権優勝を勝ち獲ったプログラムを踊りきった。
つづいて宇野はソロで『ブエノスアイレス午前零時/ロコへのバラード』を滑り、それは愛を込めた手紙を綴る風情があった。重心が低いスケーティングは出色で、得意のクリムキンイーグルで歓声も浴びた。
そして、まだ競技者としても十分に世界上位を狙えるジャンプをアクセル、トーループ、ループなど次々に高い精度で成功させ、曲の高揚感を高めていた。
このつながりは、アイスダンスとはまた違った"ふたりの物語性"を感じさせた。次の挑戦の序章につながるのかもしれない。
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