宇野昌磨が「師匠」ステファン・ランビエールとコラボ『フレンズオンアイス』で絆を表現
『フレンズオンアイス』に出演中の宇野昌磨(左)。現役時代のコーチを務めたステファン・ランビエールとのコラボナンバーを披露この記事に関連する写真を見る
【内向的な少年が世界へ】
「小さい時は人前に出てしゃべれない、内向的な性格だったんです。だから両親も、大勢のお客さんの前で演技なんてできるわけないと思っていたはずで」
今年5月、都内で行なわれた現役引退会見で、宇野昌磨はそう振り返っている。
「でも、氷上では僕ひとりだからこそ、自分がつくる表現をみんなにちゃんと見てもらえる。こうした(記者会見の)場もそうですが、みんなが真摯に自分の話を聞いてくれていて、だからこそ自分の色を出しやすい場で......。発信できるようなタイプじゃないからこそ、フィギュアスケートは性に合っていたのかなって思います」
きっと、宇野がフィギュアスケートに巡り会えたのは運命だったのだろう。彼にはスケーターとしての天分があった。それは出会いも含めたもので、人を引き寄せる輝きを備えていた。
だからこそ、現役選手としての宇野は未曾有の記録をたたき出せたのだろう。全日本選手権では6回の優勝を誇り、2022年、2023年には世界選手権の連覇を達成、オリンピックでも平昌大会が銀メダル、北京大会は個人で銅メダル、団体で銀メダルを手にした。メダル3つは、日本フィギュアスケート史上最多記録だ。
燦然と輝く経歴だが、宇野は「憧れだった」と語る高橋大輔と同様、偉大な記録だけでなく、記憶に強く残る競技者だったと言える。
その宇野が、プロスケーターとしてリンクに戻ってきた。
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著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。