紀平梨花、シニア1年目「トリプルアクセルで大変な毎日」を振り返る (2ページ目)

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 今季の戦いを振り返ってみると、SPで挑んだトリプルアクセルを成功させたのはグランプリ(GP)ファイナルだけだった。特徴的だったのは、SPで転倒するか不発になるかで失敗して出遅れても、フリーでは必ずトリプルアクセルを跳んで逆転優勝に結びつけたことだ。世界選手権の前までは、出場した国際大会では6戦全勝という快挙も達成した。

 なかでも彼女の大きな強みは、女子史上初めて、トリプルアクセルに3回転トーループをつける連続ジャンプを成功させたこと。しかも、そんな大技を狙って跳べる選手であることだろう。

 世界選手権。GPファイナル女王、四大陸選手権女王の称号を得た16歳は、同一シーズンで史上初の3冠を目指してこの大会に挑み、世界女王の座を目指した。だが、その願いはトリプルアクセルの失敗とともに露と消えてしまった。SPでシングルアクセルとなって7位と大きく出遅れた。今季何度も逆転劇を繰り広げてきたフリーでは、冒頭のトリプルアクセル+3回転トーループの成功で期待を抱かせたが、続く単独のトリプルアクセルで転倒して万事休した。

 トリプルアクセルの失敗以外はすばらしいフリー演技を披露して、152.59点の高得点をマークしたにもかかわらず、さらに完璧な演技を見せたアリーナ・ザギトワをとらえることはできなかった。

 最後は悔しい敗戦となったが、今季の結果については、ある程度の満足感を得ることができたようだ。だからだろうか、世界選手権のエキシビション当日に取材に応じた紀平の心と頭は、すでに来季に向いていた。

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