2018.02.19

番記者は見た。羽生結弦、
ケガしたからこそ勝つ「金メダルへの執念」

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by JMPA/Noto Sunao

「明日も今日のようにやればいいのかな」

 2月16日の男子フィギュアスケート個人SPでトップに立った羽生結弦は、演技後にそう話していた。羽生のSPは、プログラム全体のみならず、すべてのジャンプについても入りのスピードから跳び方までしっかりコントロールされており、歴代世界最高得点にはわずかに届かないながら111.68点を記録した。

フリーの演技を終え、人差し指を天に掲げる羽生結弦 そして翌日、五輪連覇の期待がかかったフリーを迎える。メリハリのある曲の強い音を意識しながら落ち着いて滑り出すと、滑走前の6分間練習でひとつもクリーンに決まらなかった冒頭の4回転サルコウを成功。出来栄え点(GOE)の加点を満点の3点にすると、次の4回転トーループも加点3の出来で決めて、3回転フリップも淡々とこなす。SPと同じように、まったく力みのない美しいジャンプだった。

「前半は丁寧にいったというか、やっぱり6分間練習でサルコウが不安だったので……。とにかくサルコウさえ降りられれば、前半の感覚で後半のジャンプも跳べると思っていました。何よりも、ショートプログラムの後でも言ったように、サルコウもトーループもアクセルも3回転ジャンプも、すべてが何年もやっているので体が覚えていてくれました。ただ、右足で跳ぶルッツが最も大変なので、『よく右足が持ってくれたな』という感じでした」

 フリーを終えた後、羽生は自らの演技を笑顔でそう振り返ったが、後半の滑りは厳しい戦いになった。

 本番前に懸念されていたのは、フリーを滑り切るスタミナだ。トリプルアクセルが跳べるようになったのは3週間前からで、4回転ジャンプはさらにその後。そんな中、フリーのプログラムを通しで練習できた回数は極めて少なかったに違いない。