羽生結弦が語った五輪への戦略。「自分でいられるプログラム」を選ぶ (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登直●撮影 photo by Noto Sunao

 こう話す羽生は、今回の練習でトリプルアクセルのセカンドに2回転トーループではなく2回転ループをつけることもあった。またジャンプだけではなく、止まった状態から動き出す後半の入りの部分は、トレイシー・ウィルソンコーチの滑りを参考にして何度も細かな動きを繰り返すなど、細部まで気をつかった練習を続けていた。

「4回転ルッツも跳べますし、練習でもそこそこやっていますけど、今はそれを入れようとは考えていないですね。今のこの構成でしっかりきれいにまとめること。とはいっても後半に4回転を3本入れているから去年より確実に構成は上がっています。その意味でも、まずはひとつの『SEIMEI』をしっかり完成させたいなと思っています」

 SPのバラードもSEIMEIも、それを選ぶ大きな要因になったのは「やっぱり自分に合っているな」と思ったことが一番だという。自分が滑っていて無理をすることなくその曲に溶け込めているような感覚があるので、それが最大の決め手だと話す。

「新しい曲を選んでも『ああやって、こうやって』となると、毎年毎年けっこう難しいものがあるんです。でもこのシーズンはそういうことをやっている時間はないと思って......。新しいものをやって、最初のうちは『初々しいね。これから滑り込んでいけば良くなるね』というものではなく、五輪シーズンだからこそ最初から『このプログラムは素晴らしい』と思わせるものにしなくてはいけないと思うんです。

 その意味では、自分がこの曲をどう演じられるか、どういう風に感じているのかというのをより深められるようになっていると思います。何回も何回も聴き込んでいるからこそ、どういう風にこの曲を演じようとか、どういう風にジャンプを跳ぼうとかいうことまでを含めて、練習ができています。このふたつは自分自身、呼吸のしかたなどを含めて何よりも自分でいられるプログラムなので、すごく滑っていて心地よいです。ジャンプやスピン、ステップなどのすべての要素も自分として演じられるプログラムなので、余計なことを考えずにすむと思っています」

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