羽生結弦、チェンに惜敗も大きな収穫。「4回転5本が視野に入った」 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登直●撮影 photo by Noto Sunao



「4回転を4本入れるということと、トリプルアクセル2本は外せないという気持ちがあったので、コンビネーションの回数を含めていろいろ考えました。とにかく失敗のあとはコンビネーションの3回転トーループと4回転をもうひとつというのをすぐに考えました。ただ、最初のアクセルのところで4回転サルコウを入れようと思いましたけど、ちょっとスピードが足りなかったのでトリプルアクセル+3回転トーループにして、その後で(4回転)トーループを跳ぶことにしました。その直後にブライアン(・オーサーコーチ)の顔が見えましたけど、『お前、何やってんだ』と言いたげな表情でした」

 こう言って苦笑する羽生だが、練習でもこのようなリカバリーはやったことがないという。

「一度だけ練習で最初のループも後半のサルコウもトーループもパンクしたとき、『なんだ? この練習は!』と思って1回目のアクセルのところに4回転サルコウを入れて、次のアクセルを4回転トーループに変更するチャレンジをしたことがありました。でも、現実的にはやるべきことじゃないと思っていましたし、トーループもそんなに簡単に跳べないと思っていたので、今回はかなりとっさにやった感じです」

 羽生は、演技を終えた瞬間「やってしまった」というような厳しい表情をしていたが、予定通りの構成ではなかった演技に「収穫としてはいいものを感じている」とも言う。得点は、そのリカバリーが利いてフリーの自己サードベストの206・67点を獲得。合計を303・71点にして顔をほころばせた。しかし、サルコウが2回転になってしまったことで失った点は大きい――。試合後、羽生は「300点超えがうれしかっただけで、勝てたとは思っていなかった」と説明した。

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