NHK杯SP首位発進も、羽生結弦が感じた「シュッ」の微妙なズレ (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi 能登直●撮影 photo by Noto Sunao

 この日の試合へ向けて、羽生は入念な準備をしていた。昼に行なわれた公式練習では、4回転ループをいきなりきれいに成功させるなど、単発のジャンプはキッチリと決めていた。ところが、曲かけの練習になって、最初の4回転ループがパンクして2回転に。その後の4回転サルコウからの連続ジャンプは決めたが、少し間を置いて跳んだトリプルアクセルもパンク。ただ、そうしたジャンプのミスはあったものの、つなぎの滑りに対してかなり気を配っている様子で、本番前の気持ちのたかぶりを抑えているようにも見えた。

 ジャンプは単発できれいに跳べていたことを考えると、曲かけでのミスは不安を感じさせるほどではなく、実際、ジャンプに不安はないことを競技直前の6分間練習で証明した。集中した表情になると、4回転ループも一発目できれいに決め、ミスはなかった。

 それでも、冒頭の4回転ループに少しだけ乱れが生じた。羽生本人は自らのジャンプを「シュッと行って、パッと降りるだけです」と説明するが、この日の4回転ループはその"シュッ"が少し狂ったという。その"微妙なズレ"が、重心を少しだけ先に進め過ぎる結果になったのだろう。

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