羽生結弦が取り戻した笑顔と自信。「滑っていて幸せでした」 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao

 腰の状態を気にして追い込んだ練習ができなかった中国大会前や、その中国でのアクシデントとケガのため、5日間しかリンクに上がれなかったNHK杯前とは違い、今回のファイナルに向けて、しっかり練習ができたという手応えもあったのだろう。

 本番直前の練習でパーフェクトを求めるのではなく、最後は心に余裕を持たせて自分の身体に染み込んでいる感覚を信じる。納得がいく練習をしたという自負があったからこそ生まれた気持ちのゆとり。それが羽生の演技を後押しした。

 若干の心配はSP当日の公式練習で2回続いていた3回転ルッツの軸のズレだった。結局、その不安定な部分が試合でも出てしまった。羽生は「ルッツの場合は軸が斜めになっても立てる自信はあります」と以前話していたとおり、得意とするルッツこそなんとか着氷したものの、続けて跳んだ3回転トーループでも軸が斜めになり転倒してしまった。

 羽生は、「そこが自分でも弱いところだと思いますけど、最後のルッツ+トーループはミスをすることが多い......。何かしらの解決策を、技術的にも精神的にも見つけなければいけないのかなと思います」と課題があることを認めた。

 しかし、今回のSPではそのミスがダメージになることはなく、逆に「よくあんなの(ルッツ)でトーループをつけたな、と思ったら演技中なのに笑ってしまいました」と苦笑するほどの余裕があった。

 その後のステップシークエンスは、勢いを増していく豪快な滑りで、最後のコンビネーションスピンもほぼパーフェクト。スピンとステップはすべてレベル4で、転倒の減点1がありながらも94・08点という高得点で堂々とトップに立った。

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