羽生結弦の事故を教訓に、今すべきこととは? (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi 能登直●撮影 photo by Noto Sunao

 羽生はシーズン前から「今シーズンこそが、自分の真価が問われる時。『さすが五輪王者』と誰からも思ってもらえるような演技をすることで、平昌(ピョンチャン)五輪へ向けての自分の評価も固まると思う。だからこそタイトルにはこだわりたい」と話していた。

 SP、フリーともにこれまで以上に難しい構成にしたことも、新たな進化への道筋を今シーズンからつけておきたいという思いから。だからこそ、グランプリファイナル進出に挑戦することは、彼にとって譲ることのできないものだったのだろう。そんな強い思いは、ふたつの4回転ジャンプにも表れていた。

 試合後、羽生は再びアメリカのチームドクターを中心にしたスタッフの治療を受け、顎を7針縫い、頭を3針縫った。そしてそのままホテルへ戻り、9日午前には日本へ向けて出発。帰国後に精密検査を受け、全治2、3週間と診断された。
※頭部挫創、下顎挫創、腹部挫傷、左大腿挫傷、右足関節捻挫

 11月28日からのNHK杯出場は厳しい状況だが、まだ19歳の羽生にとって、競技人生がこの先まだまだ続くことを考慮すれば、ここで無理をする必要はまったくないだろう。

 小林部長は、試合後にこう語った。

「ショート(SP)をミスして悔しい気持ちと、ベストの演技をしたいという思いもあって、羽生選手はリンクへ上がっていたと思います。最初からスピードが出ていたので、『これは行ける!』と思った矢先のアクシデントでした。6分間練習の仕上がりは演技に影響するのでみんな気持ちが入っているが、周りを注意して見ているもの。それでも、死角になるところもあるだろうし、近年の男子はレベルが上がってスピードが出ているので、6人は多過ぎる気もする」

 今回、あらためて認識させられたのが、フィギュアスケートは大きなケガにつながることもあり得る競技ということだ。男子は複数の4回転ジャンプが必須になったうえに、高得点を取るためには技と技のつなぎ区間でも休む間がないほど動作を入れなければいけなくなってきた。

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