女子フィギュア総括。ハイレベルな戦いの流れを作ったのは浅田真央 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Enomoto Asami/JMPA

 さらに、その驚きの中で、キム・ヨナも完璧な滑りをした。ジャンプもすべて余裕を持って降り、ミスらしいミスといえばステップシークエンスとレイバックスピンがレベル3になったくらい。だがその得点は144.19点とソトニコワに比べると低く、合計219.11点で2位に留まった。

 記者やカメラマンの間では「ソトニコワの得点が出過ぎでは」という声も上がった。確かにジャンプはほぼ確実に決めてはいたが、ひとつひとつが独立してしまった感じで”流れ”という点ではヨナには及ばない面もあった。また表現力の面でもそこまで熟成しているとは思えず、冷静に観ても、ヨナとの5.48点差というのは開き過ぎとも思えた。

 だがヨナにしてもエレメンツの基礎点は57.49点と、高難度の技を持っていないコストナーより低いもの。技術的には前回のバンクーバー五輪より進化しているといえないうえ、ソトニコワの高得点に影響されたのか、昨年の世界選手権で見せたような、オーラのようなものを感じさせる演技でなかったのは事実だ。そんな中で本当にフィギュアスケートらしい、美しさと濃密な空気感を見せたのは、コストナーだったかもしれない。その濃密感と得点が完全にリンクしていないのも、今のフィギュアスケートである。

 とはいえ、彼女たちのミスを極力抑えた演技の競演は、五輪という大舞台の中での精神力の強さを示すものであった。十分に賞賛されていい。それだけに今回の結果に対して、「やっぱり地元開催だから」というような形容詞を付けてささやかれるのは残念なことだ。

 次は、そんなモヤモヤしたものを吹き飛ばすような、彼女たちの熾烈な競り合いをもう一度観てみたい。出来ればそこに、浅田真央が加わってくれていたらもっともっとワクワクするだろう。
浅田真央の特集記事も掲載。スポルティーバ ソチ五輪速報&総集編は2月25日発売>

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