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【プロレス】藤原喜明が辿る「旅館破壊事件」の記憶 殴り合った前田日明と武藤敬司の翌朝のやりとりを明かす (2ページ目)

  • 松岡健治●文 text by Matsuoka Kenji

【前田と武藤の殴り合いは「コミュニケーション」】

 当時、武藤はデビュー4年目。海外武者修行を終えてメインイベンターに大抜擢された、新日本の未来を託された新星だった。しかしそんな若手が、UWFのエースと殴り合うなど前代未聞だった。

「前田と武藤が殴り合ってたんだけど、俺が覚えている限りでは、前田が武藤に『俺を殴ってみろ』と言ったんだよ。そうしたら武藤は、『先輩は殴れません』って言いながら三歩ぐらい下がって、走りながらバッカーンってぶん殴ったんだ。畳の上には一升瓶やらビール瓶やらが転がっていたから、前田は瓶に足を滑らせてお膳の上に倒れてな。

 それで今度は、前田が『お前、やるじゃないか。お返しだ』って武藤を殴ったんだよ。たらふく酒が入っているから、力加減もないしふたりとも余計に顔が腫れてな。次の日の朝には、武藤が『前田さん、顔が腫れてますけど、どうしたんですかぁ?』って聞いて、前田も『お前も腫れているな』って返してたよ」

 藤原は、前田と武藤の殴り合いを「いつものことだ」と思いながら見ていたという。

「猪木さんもただ見てたな。素人にはわからないだろうけど、殴り合いなんて俺たちにとってはコミュニケーションのひとつなんだよ。だから、俺も猪木さんも何もしなかったな」

 前田と武藤の殴り合いをきっかけに、いたるところで選手同士が乱闘を始め、館内の備品が破壊されていった。藤原は細かいところまでは覚えていないが、記憶に残っている光景があるという。

「誰かが吐いて、わかめが廊下に流れてきたのには参ったな(苦笑)。ドアを蹴破ったヤツもいたし、部屋の布団の上に吐いたヤツもいたな。そこらじゅうが酒臭かったよ。旅館の人には、申し訳ないことをしてしまったな」

 悪夢のような一夜が明け、バスで旅館を出る時の光景も覚えている。

「俺らが来た時は旅館の女将さんや女中さんが並んで『いらっしゃいませ』って歓迎してくれたけど、帰る時は誰もいなかったよ(苦笑)。無理もないよな。あらためて謝りたいな」

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