山中慎介は激闘の「武居由樹vs比嘉大吾」で勝負を分けたポイントをどう見たか 10.13「井上拓真vs堤聖也」も予想した

  • 篠﨑貴浩●取材・文 text by Shinozaki Takahiro

山中慎介インタビュー 後編

(前編:井上尚弥のKOが後半のラウンドに多くなった理由を山中慎介が解説「相手が『いかに倒されないか』を考えている」>>)

 9月3日に行なわれたWBO世界バンタム級タイトルマッチは、王者・武居由樹と挑戦者・比嘉大吾による激闘になった。互いに一歩も譲らないシーソーゲームの末、武居が僅差で勝利を収め、王座を死守。その好勝負についての分析と、10月13日に行なわれるWBA世界バンタム級タイトルマッチ、井上拓真vs堤聖也について、元WBC世界バンタム級王者・山中慎介氏に聞いた。

最終ラウンドまで激闘になった比嘉大吾(左)と武居由樹 photo by 日刊スポーツ/アフロ最終ラウンドまで激闘になった比嘉大吾(左)と武居由樹 photo by 日刊スポーツ/アフロこの記事に関連する写真を見る

【どちらが取ったかわからないラウンドが多かった】

――武居選手と比嘉選手、注目の日本人対決はどちらが勝ってもおかしくない接戦でしたね。

「本当に白熱した試合でした。優劣がはっきりしないラウンドが多くて、どちらが勝ってもおかしくない内容だったと思います。見ていても『どっちが取ったんだろう?』とハラハラしていました」

――武居選手は、ロープに詰められて打たれる場面もありましたが、その後にほぼ反撃していました。

「そうなんです。『このままだと比嘉が取るだろう』というラウンドでも、武居が"山"を作って終わることが多かった。かといって武居が取ったのかというと......そんなラウンドが多かったですね」

――比嘉選手のパンチで、武居選手の頭が揺れるシーンもありました。

「比嘉のパンチはタイミングもよかったと思います。武居は本来、パンチが強いんですが、あの試合は少し後ろ重心だったので、パンチに体重が乗り切らなかった感はありました」

――比嘉選手の入り際、武居選手のアッパーがよくヒットしていました。

「比嘉が低い姿勢で入ってくるので、そこにアッパーを合わせる、下から突き上げるのは作戦としてあったと思います」

――お互いタフでしたね。

「比嘉もいいタイミングで当てていたのですが、ちょっと浅いのか、あるいは下の階級から上げてきてバンタム級では少しパワーが足りないのか。武居の腰が落ちてもおかしくないくらいのパンチをヒットさせているように見えましたが、武居は決定的なダメージを受けていませんでしたね。比嘉も一発で倒すタイプではありませんから、一発一発の威力を、武居がそこまで感じていなかった可能性はあります」

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