アントニオ猪木のひと言で柴田惣一は「千のネクタイを持つ男」に 棚橋弘至との縁も
(連載2:猪木を全日本の試合会場に誘った柴田惣一 馬場がひとり、リング上で待っていた>>)
1982年に東京スポーツ新聞社(東スポ)に入社後、40年以上にわたってプロレス取材を続けている柴田惣一氏。テレビ朝日のプロレス中継番組『ワールドプロレスリング』では全国のプロレスファンに向けて、取材力を駆使したレスラー情報を発信した。
柴田氏はネクタイ愛好家としても知られるが、アントニオ猪木さんの何気ないひと言でネクタイに興味を持つようになったという。今回はネクタイがつなげた縁について語ってもらった。
アントニオ猪木さん(左)のひと言でネクタイ愛好家になった柴田惣一氏 写真提供/柴田惣一氏この記事に関連する写真を見る
【猪木から「いつも地味なネクタイしているな」】
――ミル・マスカラスの異名「千の顔を持つ男」のごとく、柴田さんは「千のネクタイを持つ男」としても有名ですね。
柴田:いろいろユニークなネクタイを集めるようになったのは、実は猪木さんのひと言がキッカケです。もともと、新日本プロレスの解説を担当し始めた頃は、キチンとした身なりをしないといけないからフォーマルなネクタイをしていました。
――東スポを代表してテレビに映るわけですから、落ち着いたネクタイになりますね。
柴田:でも、ある日、猪木さんが「いつも地味なネクタイしているな。フフッ」と笑ったんですよ。それで、ユニークなネクタイを探すようになったんです。 新日本の選手は基本、黒のショートタイツ。だから逆に、「シンプルなネクタイではなく奇抜なネクタイにしてみよう!」って。
――ストロングスタイルからヒントを得た、逆ストロングスタイルといった感じですね(笑)。猪木さんの反応はどうでしたか?
柴田:猪木さんは、いいと思った時はあまり何も言わない。ネクタイを目にして「フフッ」と笑うだけでした。でも、表情が豊かな人だから言わんとしていることは伝わるんですけどね。
――派手なネクタイをすることで、周囲に何か変化はありましたか?
柴田:蝶野正洋や矢野通、ジャイアント・バーナード、カール・アンダーソンとかに、入場時にイジられましたね。蝶野には「そんなネクタイしやがって、ガッデム!」って言われましたよ(笑)。蝶野とは放送席で同席することもあったけど、オンエア時と休憩時では口の利き方も態度も、まるで人が違ったようだった。こっちが戸惑うほどでしたね。
そうそう。ネクタイを派手にしたのはもうひとつ理由があって。頭から注意を逸せるためです(笑)。
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