「死ぬんじゃないか」と心配されたジャイアント馬場がハンセン相手に躍動。実況アナも「やれ! 馬場」と叫んだ (2ページ目)

  • 松岡健治●文 text by Matsuoka Kenji
  • photo by 木村盛綱/アフロ

入場時にも「馬場の衰え」を伝えたが・・・

 その中継後、倉持は番組プロデューサーの原章に呼び出された。原は1961年の日本テレビ入局から力道山が存命中のプロレス中継に携わり、馬場の全日本プロレス旗揚げの際には日本テレビ側の窓口として団体設立のために東奔西走。そして「全日本プロレス中継」の初代プロデューサーに就任するなど、馬場のプロレスを最も間近で見てきた人物だった。

「原さんから『俺は日プロ時代から馬場を見ているんだ。かつてのビデオを見てみろ。あの16文キックの迫力はすさまじかったんだ。視聴者の夢を壊すようなこと言うんじゃない』と真剣に怒られて説教されました。ただ、それは日プロ時代の話でしたから、私は『原さんだって、今は衰えたと思っているでしょ?』と言い返しました。そうしたら原さんは『まあな。ただ、視聴者にそういう気持ちを抱かせてはまずいよ』と諭されて、それから私は反省して、馬場さんに感情を傾けて実況するように改めました」

 ただ、馬場の衰えを感じる気持ちは変わらなかった。その最中でのハンセンとの一騎打ち。馬場が花道から入場する時に、倉持はこう実況した。

「最強のチャレンジャーを迎えますジャイアント馬場。王者のジャイアント馬場といたしましては、今日こそは20年間のキャリアからくる勝負勘を一気に吐き出しましてストッパー役を務めてもらいたいと思います。しかし、PWFのヘビー級のベルトは、もう大ピンチという見方がもう大勢を占めています。ジャイアント馬場、どういうふうに最大のピンチを切り抜けますか」

 倉持は自らの不安をマイクに向かって訴えた。しかしゴングが鳴ると、その思いは杞憂であることを思い知らされる。馬場が、それまでの衰えを払拭する動きを見せたのだ。

 ロープを縦横無尽にハンセンと駆け抜ける。両者が1往復半を走った時にタックルでファーストコンタクト。ハンセンが再びロープの反動を使ってタックルを狙う。そこへ馬場が左足を上げ、カウンターの16文キックでハンセンを倒した。

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