国内外86連勝の超逸材など日本女子レスリングは早くも世代交代? 続々と現れる金メダル級のニューヒロインたち (2ページ目)

  • 宮崎俊哉●取材・文 text by Miyazaki Toshiya
  • photo by AFLO

【五輪金の川井友香子を超えた】

 一方、今年の世界選手権での悔しさをバネにして全日本選手権を制覇したのが、62キロ級の尾崎野乃香(おざき・ののか/18歳/慶應義塾大)だ。

 オスロでの世界選手権・初戦、2019年覇者のキルギス選手に序盤4−0とリードを奪うものの、その後に逆転されて惜敗。敗者復活戦を勝ちあがって銅メダルは獲得したが、この敗戦が尾崎をさらに強くしたと言っても過言ではない。

 敗北後、自らの敗因を徹底的に分析したという。メンタルの弱さを自覚した尾崎は、常にそれを意識し、日々のスパーリングでも実戦している。

「リードされているシーンでも、自分が得意とする片足タックルを武器にドンドン攻めることができる。それが自分のよさですが、(世界選手権では)逆に4−0とリードしているのに不用意に攻め込んでカウンター攻撃を喰らってしまった。そこを直さないと世界では勝てない。だからスパーリングでは、いつも残り時間と得点差を自分で決めて練習しています」

 ミスをしたほうが負ける......そのレスリングの鉄則を18歳にしてカラダに染み込ませ、尾崎はこの春に慶応義塾大の環境情報学部に進学した。「講義のレベルの高さと課題の多さにやられています」と笑いながらも文武両道を貫く"クレバーさ"も、彼女の武器のひとつと言えるだろう。

 今年12月の全日本選手権では、対戦相手に研究されるという怖さも体験。それでもしっかり勝ちきり、大会2連覇を達成した。レスリング関係者のなかでは、「東京オリンピック金メダリストの川井友香子を超えた」との声も少なくない。

 2003年生まれの尾崎は、向田や須﨑など五輪金メダリストを輩出したJOCエリートアカデミー出身。幼少期から身体能力の高さに秀でており、ポテンシャルの高さは折り紙つき。今後は積極的に海外へ出て、強豪選手に対して片足タックルからアンクルホールドをしつこく狙う気持ちの強さを上げてほしい。この階級で世界を制するには、上半身の強さも必要になってくる。

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