「井上尚弥でさえ完璧ではなかった」。リング誌編集長が見た京口紘人の米デビュー (2ページ目)

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke

 そんな底力がある挑戦者との防衛戦は、京口にとってイージーにはなりませんでした。ただ、今回がアメリカデビュー戦だったことは考慮されるべきでしょう。未知の環境で、しかもDAZNによって世界中に生配信される大舞台でしたから、ベストの戦いをするのは簡単ではなかったはずです。

 思い返せば、井上尚弥(大橋ジム)でさえ、2017年9月の米国デビュー戦は完璧な出来ではありませんでした。井上は左ジャブとボディ打ちがよく、アントニオ・ニエベス(アメリカ)を相手に6回終了TKO勝ちを飾りましたが、全体的に動きが硬く、『向上の余地があるな』と思いました。

 日本で戦った試合と比べて、一段落ちるパフォーマンスだったと思います。そういった例を考慮すれば、大きなプレッシャーがかかるアメリカでの第1戦で、京口がベストの状態で戦えなかったことも、当然のことだったのかもしれません。

 私が京口の試合をリングサイドで見るのは今回が初めてでしたが、左アッパーがいいですね。ボディ打ちにも力がこもっていて、危険なパンチ。京口はそれらをミドルレンジから打つこともあった。カウンターを浴びるリスクもありますが、遠い距離から繰り出されるために威力のある武器になっています。

 彼のパンチの出し方を見ると、ローマン・ゴンサレス(ニカラグア)をはじめとする他のエリート王者たちの打ち方を研究していることが伝わってきます。ライトフライ級での京口は、ミニマム級で戦っていた時ほどパワフルではないのかもしれませんが、いい体つきをしています。今後、IBF同級王者フェリックス・アルバラード(ニカラグア)のような大柄な同級の選手と対戦した時に、どんな戦いをするのかが楽しみです。

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