【国際プロレス伝】語り草となった「田園コロシアム・こんばんは事件」 (4ページ目)

  • 宮崎俊哉●取材・文 text by Miyazaki Toshiya
  • photo by AFLO

 木村自身は、「初めてのところに行って、きちんと挨拶するのは当然なのに、なんで笑われなくてはいけないんだ」と怒っていたという。

 細かいことだが、「こんばんは、ラッシャー木村です」というのは、ビートたけしが面白おかしく、わかりやすくギャグとして創作したもの。事実は、「こんばんは」だけだ。

 敵も、そのファンも、ズッコケさせたんだから、作戦は成功だ――。

 当時から、プロレスファンのなかには、そうした意見も多かった。

「いや、それは違います。木村さんはそうじゃないんですよ。あれは作戦でも戦法でもなく、礼儀正しく挨拶をした。それだけ。木村さんにとって、普通のことなんです。あれだけ緊張した場面で、アントニオ猪木さんを目の前にして、それでも木村さんは、"ラッシャー木村らしさ"を貫いた。

『国際プロレスでは見られないような満員の観客の前で、ラッシャー木村はアガってしまったんだろう』などと言う人がいるが、冗談じゃない。木村さんは普通じゃ考えられないような、スケールの大きな人なんです。人間としてすべてを貫いた木村さんは、『お見事』のひと言。悟りの世界なのかなぁ、木村さんの勝ちですよ。

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