悪夢の「ロマゴン敗戦」で誤算。井上尚弥の世界進出プランを再考する

  • 水野光博●文 text by Mizuno Mitsuhiro
  • photo by AFLO

 その瞬間、井上尚弥が解説席にいたのは、神の気まぐれだろうか?

 アマ87戦全勝、プロ転向後も46連勝のレコードを誇った「ロマゴン」こと4階級制覇王者ローマン・ゴンサレス(ニカラグア)が初めて負けた。

「ロマゴンとの統一戦」が白紙となってしまった井上尚弥「ロマゴンとの統一戦」が白紙となってしまった井上尚弥 現地時間3月18日、ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで行なわれたWBC世界スーパーフライ級タイトルマッチ。ロマゴンは元王者のシーサケット・ソー・ルンヴィサイ(タイ)とフルラウンドの激闘を演じる。初回にダウンを喫し、さらに偶然のバッティングで目尻をカットする不運に見舞われたものの、観客も、ロマゴン自身も、その勝利を疑わなかったはずだ。しかし、判定は0−2。ニカラグアの至宝は、初めて敗北の味を知る。

 WBO世界スーパーフライ級王者の井上は、その試合を生放送する番組のゲスト解説をしていた。想定外の結果に、言葉少なに心境をこう語っている。

「まさか今日、負けるとは思わなかった。言葉が見つからない」

 言葉の裏側を汲み取るなら、「最初に倒すのは、俺だったはず」ではないだろうか。

 年内に実現するのではないかと囁かれていた「井上対ロマゴン」の統一戦。実現すれば日本国内のみならず、世界中のボクシングファンが歓喜するビッグマッチだった。その世紀の一戦を誰よりも待ち望んでいたのは、他ならぬ井上自身だったはず。ロマゴンの敗戦を受け、井上はこうも語っている。

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