【ボクシング】村田諒太の武器、右ストレートを生かす術とは? (2ページ目)

  • 原功●文 text by Hara Isao photo by Getty Images

 試合はほぼ、そのとおりの展開となった。村田はスタート直後から圧力をかけてネリオを下がらせ、左のジャブで切り込んで右ストレートを繰り出す。さらに左のボディブローをめり込ませるなど、パワー主体のボクシングで圧倒していった。右ストレートを惜しげもなく繰り出すことでパンチの連係がスムーズになり、全体的なスピードが増したという印象を受けた。「僕は生粋のファイター。前に出て倒しに行くタイプ」と自己分析していたように、持ち味を前面に出すことでプラス効果が得られたようだ。

 また、2戦目よりも3戦目、そして3戦目よりも今回(4戦目)の試合のほうがプロの水に馴染んだ戦い方といえた。フィジカルの強さを生かしてガードを固めて前進し、左ジャブであおり破壊力のある右ストレートから左のボディブローにつなげる――。今後は、この戦闘スタイルをベースに肉付けをしていくことになりそうだ。

 ただ、それらを踏まえたうえで、いくつか気になる点が散見した。そのひとつが、顔面への左フックが皆無だったことだ。最大の決め手である右ストレートをより効果的にするためにも、また相手に与える恐怖感という意味でも、さらに攻撃のバリエーションを増やす意味でも、左フックの返しは「必須」といえる。

 また、パンチに緩急と強弱のアクセントもほしいところだろう。さらに欲をいえば、今後は相手を追い込んだ際の詰めの研究も必要だ。一方的に攻めながら試合が6回まで長引いたのは、まだまだ甘さがあったということでもある。もうひと工夫があれば、勝負はもっと早く決したかもしれない。

 思い出すのは、1980年代から1990年代にかけて3階級制覇を成し遂げたメキシコのレジェンド、フリオ・セサール・チャベスである。チャベスは村田と同じ攻撃型の選手だったが、さまざまな策を用いた頭脳派としても知られている。相手を追い込んだあと、チャベスは一気に攻め込むだけでなく、相手に瞬間的に逃げ道を与える方法も採った。たとえば、ロープやコーナーに相手を詰めたあと、自分が一歩下がる。それに釣られて、相手も押し返そうと前に出る。その瞬間に、カウンターを合わせるのである。相手のガードを開けさせたうえで、パンチの効果も倍加させるわけだ。こうした知識は、ボクシングマニアでもある村田も承知しているはず。実戦に採り入れることができれば、鬼に金棒となるだろう。

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