【ボクシング】無敗の挑戦者ブラッドリーに、最強王者パッキャオがついにマットに沈む!? (2ページ目)

  • 原 功●文 text by Hara Isao
  • photo by AFLO

 プロ17年、次が60戦目(54勝38KO3敗2分)となるだけに、肉体的なダメージと精神面の疲労が限界に近づいているとしても、不思議はない。本人は言明していないものの、周囲からは引退の時期に関したコメントも漏れ始めている。また、今回の試合に備え、パッキャオはフィリピンで集中トレーニングを行なったが、その際にフィジカルトレーナーが戦列を離れるなど、チームの亀裂を心配する声もある。場所をロサンゼルスに移しての練習ではトレーナーも再合流したが、意思の疎通を欠いていたことは否めない。以前では考えられないことである。

 一方、挑戦者のブラッドリーの評価が高いことも、パッキャオ危機説の根拠となっている。回転の速い連打で相手を追い込むことから、『デザート・ストーム(砂漠の嵐)』の異名を持つブラッドリーは、29戦28勝(12KO)1無効試合の28歳。この2年ほどは「打倒パッキャオ」を掲げ、研究を重ねてきただけに、『危険度A』の挑戦者といえる。本来は1階級下のクラスだが、すでにウェルター級でも試運転を済ませ、パッキャオと対戦するために昨夏、所属プロモーターを変更。また、直近の2戦ではパッキャオと同じサウスポーと戦うなど、用意は周到だ。高い運動能力だけでなく、この執念を甘くみることは極めて危険である。

 5月末の時点でのオッズ(賭け率)は、『4対1』でパッキャオ有利と出ている。見ようによっては一方的な数字といえるが、モズリー戦やマルケス戦が『8対1』だったことを考えると、最近のパッキャオ戦では珍しく接近したオッズなのである。こうしたところにもパッキャオの陰りが感じられる。

 パッキャオが得意の左を当て、早いラウンドでKO防衛を果たすのか。それともブラッドリーが激しいラッシュで番狂わせを起こすのか。6月9日、ラスベガス。何が起こっても驚かないよう、私たちは心の準備をしておく必要がありそうだ。

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