【プロレス】櫻井康雄×流 智美
「昭和のプロレスは立派な文化なんです!」

  • 中込勇気●取材・文 text by Nakagome Yuki
  • 本田雄士●写真 photo by Honda Takeshi

『燃えろ!新日本プロレス』大好評刊行記念スペシャル対談Part.1


猪木vsストロング小林は、昭和プロレスの本流

――『燃えろ!新日本プロレス』は、1970年代の草世期から90年代の黄金期まで、数々の名勝負をDVDに収録していくわけですが、全50号予定のこのシリーズの見どころ、今後収録が期待される名勝負を教えてください。

櫻井 新日本プロレス=アントニオ猪木ですよ。さらに私見を言えば、猪木の時代は88年の長州力戦で終わった(7月22日、札幌で長州にフォール負け)。平成にも猪木はいろいろな試合をやっていますが、それらは猪木のプロレス人生における付録のようなものだと考えています。全盛期があり、衰えがあり...猪木という大レスラーの軌跡を網羅するのはいいと思いますが、いわゆる「猪木のプロレス」ならばやっぱり昭和の時代ですよね。

 そうですね。櫻井さんは73年4月6日の宇都宮大会から88年まで『ワールドプロレスリング』(テレビ朝日)の解説をやられていましたよね。猪木の一番いい15年間をリングサイドでご覧になっているわけです。だから、その時代をこのシリーズに凝縮したいというのは当然で、私もその意見に賛成です。

櫻井 今のプロレスを見て育った世代は、昭和の試合をどう見るんだろうね?

 たとえば『燃えろ!新日本プロレス』の4号に収録した猪木vsストロング小林(74年3月19日、蔵前国技館)を若い人が観て、「かったるくてつまらない」と思うのであれば、私も考えを改めないといけないですが(笑)、そんなことはないと思います。

櫻井 ないでしょう。猪木vs小林は昭和のプロレスの本流ですよ。この時代の猪木の試合は、凡戦といわれるものでも味のある試合がありますよ。東京体育館のジョニー・パワーズとのNWF戦(73年12月10日)なんかも歴史的な価値がありますしね。内容的には評価を受けなかったけど、猪木vsルー・テーズ(75年10月9日、蔵前国技館=15号収録予定)もいい。アントニオ・ロッカがレフェリーをやったんです。もう僕なんかは、猪木とテーズが闘って、間にロッカが立っているというだけでシビレました。ものすごいロマンを感じましたね。同じような意味では、テーズがレフェリーをやった猪木vs藤波もいい。

 85年9月19日の東京体育館ですね。88年8月8日の横浜文化体育館における60分ドローが有名ですが、東京体育館の猪木vs藤波のほうがいいと思います。

櫻井 あれは藤波が猪木を超えられるかどうかにポイントがあり、世代交代戦の典型的なものです。最後は猪木がレフェリーストップ勝ちしましたが、藤波にも可能性を感じましたね。

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