【男子バレー】世界クラブ選手権のベストリベロ、山本智大の矜持「コンスタントにプレーできるのが自分の強み」 (3ページ目)
【「ミスはするものだから、切り替えられるように」】
「正直に言えば、"何を言っているのかな"という気持ちでした(笑)。フローターサーブだったら代わりに出られるところはあるんですが、(ボールが一瞬で到達する)ジャンプサーブはできることが限られている。トスを上げた後は(位置を)入れ替わっていいルールになりましたが、動いちゃうとリスキーで、そこは相手も見ているから難しい。逆に打ったりもしてくるので」
そう言う山本は、これまでに何度も、理解されない現実と直面してきた。
「最初はいろいろ考えましたね。リベロになりたてのときや、代表に入りたての頃は、『なんで取れない』、『なんでそこにいない』と言われることもあって。でもそのうちに、割り切れるようになりました。
全部取れるに越したことはないですけど、取れるボールと取れないボールを見極めることも大事だなと。たとえばライトから打たれ、ブロッカーの位置が悪く、変なところを抜かれて自分の脇に落ちたりしたら、割り切るしかないです」
過ぎたるはなお及ばざるが如し──。完璧を求めすぎれば、アベレージが下がりかねない。アップダウンをなくすこと、つまり高く安定することで、チームの勝利につなげる。
「もちろん調子の波もありますけど、自分はそれが少ないほうだと思います」
そこに山本が求めるリベロの真価があるのではないか。
「コンスタントにプレーできることが自分の強みです。めっちゃ調子がいい、めっちゃ調子が悪い、と波があるよりも普通を保ちたい。ミスはするものだから、切り替えられるようにする。ミスをする前提のマインドと言うべきでしょうか。
(大阪ブルテオンの)トーマス・サムエルボ監督にも『人はミスをする。どんな素晴らしい選手でも。バレー界だけじゃなく、(リオネル・)メッシも、レブロン(・ジェームス)も、いつも完璧じゃない』と言われます。普通にやり続けられるか。それが大事ですね」
質の高い普通。それは一流のリベロに不可欠なものかもしれない。
(つづく)
後編を読む >>> ベテラン山本智大の飽くなき向上心「まだいける」「謙虚さを忘れず、もっと上を」
山本智大(やまもと・ともひろ)
1994年11月5日生まれ、北海道江別市出身。小学1年生のときにバレーボールを始め、酪農学園大附とわの森三愛高、日本体育大を経て、2017年にFC東京(現・東京グレートベアーズ)に加入。2018年に日本製鉄堺ブレイザーズへ移籍するとレギュラーに定着し、2019年に日本代表に初選出された。東京、パリと2度の五輪のほか、世界選手権に5回、ネーションズリーグに5回、ワールドカップに2回出場。日本随一のリベロの座を確立している。2024-25シーズンのSVリーグのベストリベロ、2025年世界クラブ選手権のベストリベロにも選出されている。
著者プロフィール

小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。
3 / 3

