大坂なおみ、全米OP初日に大興奮。観客を楽しませたい衝動に駆られた訳 (2ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

「去年は観客もいなく、ビジネスモードだった私は、派手なサーブを打つようなことがなかった」

 大坂はそう回想したが、それはひるがえせば、今年は観客を喜ばすためにあえて度肝を抜くようなショットも打った、ということだろう。

 ただ、ファンの目も意識したそれらのプレーは、単発で会場を沸かせはするが、全体としてはチグハグで、連続性や構成力に欠ける感は否めない。

 もっとも、大坂自身もある時点から、その事実に気づきはじめていたとも言った。

「相手を動かし、オープンコートを作ることができていなかった」

 競った第1セットを手中に収めた大坂は、試合を分析する冷静さを取り戻したという。

「すべてのポイントに集中すること」「相手にブレークを許さぬため、サーブではとくに集中し、あらゆる策を講じること」

 降り注ぐ観客の声援や、テニスを楽しむファンのエネルギーを肌で感じながら、大坂は自らに言い聞かせる。

 そして第2セットでは、試合の趨勢は一気に大坂に傾いた。

 無理に一発で決めにいくのではなく、コーナーに丁寧にボールを打ち分け、相手の動きを見極めてから逆を突く。一方で、オープンコートができたと見れば、迷いなく強打を叩き込んだ。

 勝負の分岐点を見極める「嗅覚」も鋭さを増す。第2セットでのそれは、ブレークしてゲームカウント2−0で迎えた、サービスゲームでの攻防だ。

 ミスもあって相手に2連続のブレークポイントを許すが、そこから落ち着いたストローク戦を展開し、追いつく。相手も「ここが勝負どころ」と必死にボールに食らいつくが、そのしつこさには、大坂も我慢強くフィジカルで対抗した。

 デュースを3回繰り返し、8分を要したこのゲームのキープに成功した時、実質的な決着はつく。試合にピリオドを打つショットは、サーブで相手を崩し、返球を迷わずフォアで叩き込んだ、大坂らしいウイナー。

 終わってみれば、試合を通じ8度面した相手のブレークポイントをすべてしのいだ、勝負のあやを見極めた勝利だった。

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