遅れてきた「花の94年組」。二宮真琴が咲き誇ったウインブルドン (3ページ目)

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

 つい数年前まで肩を並べて競い合い、ダブルスではともに戦った同期たちの活躍を見ながら、二宮は「彼女たちにできるなら、私にも......」との思いを募らせた。個性派揃いの世代のなかでは、比較的物静かで口数も少なめだが、負けず嫌い魂では他の面々に引けを取らない。

「実績では置いていかれていると感じている。まだシングルスでグランドスラムに出られていないし、ダブルスでも加藤/穂積が上に行った。私も早く追いつき、追い抜きたいと思います」

 今大会ベスト8に進んだ時点で、彼女は毅然と口にした。

 157cmと小柄な二宮の持ち味は、前衛で見せる俊敏な動きから飛び込むボレーや、相手の陣形を見極めてオープンコートに打ち込む思い切りのよいストローク。しかしここ数年は、自身のサービスゲームに不安を抱き、さらには欧米選手の強打に対して気持ちで引いてしまう面があったという。

 それが今大会では、芝という展開の速いコートの特性も一助になったか、プレーから迷いが消えた。コーチでもある綿貫裕介と組んだ混合ダブルスで2試合を戦い、コートカバーの広いパートナーを背に伸び伸びと攻めた経験が、女子ダブルスに生きた側面もあっただろう。サービスゲームでは長身のパートナー(レナタ・ボラコバ/チェコ)の存在をうまく活かし、一発で決められなくとも相手に攻めさせない術(すべ)を、戦いながら体得した。

3 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る