2019.10.28

南ア監督の作戦がズバリ。
日本でプレーしたポラードが成長を見せた

  • 斉藤健仁●取材・文 text by Saito Kenji
  • 齋藤龍太郎●撮影 photo by Saito Ryutaro

 このまま延長戦に突入か……。そんな雰囲気になりつつあった後半33分、今度は南アフリカ代表が逆襲に転じる。

 試合前、南アフリカ代表を率いるラシー・エラスムス監督は、「スクラムとモール、そしてディフェンスでプレッシャーをかけたい」という狙いのもと、通常5人の控えFWを6人に増やして臨んでいた。

 試合終盤、6人の控えFWはすでにピッチに入っていた。すると終了間際、その6人の控えFWのひとりであるベテランFL(フランカー)フランソワ・ローがジャッカルを決めて、相手の反則を誘うことに成功する。試合の流れを再び呼び戻す、まさにビッグプレーだった。

「(このプレーが)大きかった。ベンチから投入された選手の貢献で、大きな違いが生まれた。フランソワのプレーは決勝へ駒を進めるのに、とても重要だった」(エラスムス監督)

 相手の反則で得たペナルティで、南アフリカ代表はタッチに蹴り出す。そして、自慢のFWを武器にモールを押し込む作戦に出た。南アフリカ代表の圧倒的な推進力の前に、たまらずウェールズ代表は故意にモールを崩して反則を犯す。

 残り5分、南アフリカ代表はPGを選択する。蹴るのはもちろん、ここまで4本のプレースキックをすべて決めてきた司令塔のポラードだ。

 ポラードは2012年のU20世界選手権で南アフリカ代表を優勝に導いた若きスター選手で、4年前のワールドカップでは日本代表に敗れた試合にも出場していた。当時は21歳。2015年度にはトップリーグのNTTドコモでもプレーしていたが、当時はどことなく頼りない印象もあった。

 しかし4年の月日を経て、今ではスーパーラグビーのブルズ、そして南アフリカ代表の主力にまで成長した姿がそこにはあった。

 右中間、距離は約33メートル。このキックを決めれば、南アフリカ代表は勝利をほぼ手中にする。

「緊張しましたが、蹴る瞬間は置かれている状況をいったん忘れて、キックのプロセスに集中しました。これまで激しい練習をしてきましたし、こういったシナリオは頭の中で何度も想定していた」