元日本代表・山田幸代が明かす、ラクロスが2028年ロス五輪追加競技となるまでの経緯 ルールやプレー人数の変更など「柔軟に対応できた」
五輪用の6人制ゲームの策定に関わった山田幸代さんこの記事に関連する写真を見る
山田幸代インタビュー(後編)
2023年秋、ラクロスを含む5競技が2028年ロサンゼルス五輪の追加競技として承認された。世界ラクロス協会(正式名称:WORLD LACROSSE)の選手会理事として五輪競技用の6人制ラクロスのルール策定に関わった山田幸代さんとしても、喜びの瞬間だった。
日本ではラクロスを知らない人もまだ多いが、この競技の魅力やオリンピックに採用されたことによる今後の日本や世界での普及への期待について、語ってもらった。
【ラクロスとはどんな競技?】
クロスと呼ばれる先に網のついたスティックを用いて硬質ゴム製のボールを奪い合い、相手陣のゴールにボールを入れて得点を競う、ネイティブ・アメリカン発祥とされるスポーツ。10人制(国際ルール)は、男女でルールに違いはあるものの、両方とも10対10で、1クオーター15分、計4クオーターで行なわれる。長さ100〜110m、幅50〜60mというフィールドサイズも共通。男子ではボディチェック(身体接触)が許されるため、選手は防具を装着する。2028年ロサンゼルス五輪で採用される6人制(シクシーズ)は長さ70m×幅36mのフィールドで行なわれ、時間は8分×4クオーターとなっている。
【五輪競技採用までの道のり】
――ラクロスがロサンゼルス五輪の競技として正式採用が決まった時、山田さんの反応はどのようなものでしたか?
「ホッとしたっていうのが一番大きかったと思います。そのため(五輪競技になるため)に活動をずっとしてきたので、すごくうれしかったです。『決まってほしいな』というところから『決まるだろうな』と確信に変わっていった頃からはもう、早く結果を知りたいという、フワフワというか不安というか、早くホッとしたいという思いがありました」
――五輪種目へのロビー活動を進めていくなかで、採用されるという確信があったのですね。
「はい。私は世界ラクロス協会で選手会理事やルール委員会のサブコミッティチェアとして中に入っていたので(感触は)ありました。日本の協会の皆さんは懐疑的だったようですが、私は『けっこう可能性ありますよ』とは伝えていました。
ただ当初、2022年に発表される予定だったのが最終的には2023年の10月まで延期となりました。その間にいろんなスポーツが人気になったりすると、決まりかけていたものが覆るということもあるかもしれないと不安になったりもしました」
――オリンピック競技に採用されるまでの経緯を教えていただけますか?
「ラクロスが日本に入ってきたのは30年くらい前ですが、私が競技を始める前は世界のラクロス協会は男子と女子のふたつに分かれていたんです。
ラクロスは、ネイティブ・アメリカンの陣地合戦の儀式が起源といわれていて、スコットランドから始まったのが女子のラクロスで、男子のラクロスはアメリカ大陸で広がっていきました。だから男女のルールに違いがあるのです。
ただ、オリンピック(競技)に入るためにやれることをしましょう、分かれていた協会を統一しようというスタンスを共有できたため、ルール変更などの変化に対して柔軟に対応できました」
――それで、オリンピックのための競技のルールを山田さんたちルール委員会のメンバーで決めていった。
「国際オリンピック委員会(IOC)からは『ラクロスをオリンピックに戻すためには、人数が多いからルールを変更しなければいけない』と言われていました。それを受けて私に連絡が来て、(本来の10人制よりも少ない人数で行なうための)取り組みを始めました。
ラクロス協会の中では(ルール等の)変化を怖がらずにどんどんと追加したり、変えていったので、"これは多分、IOCの人たちからも柔軟には見られていたんだろうな"というのはありました。ワールドゲームズ(※2017年大会で女子のみが採用され、2022年は女子が公式競技に、男子は公開競技として採用)に入ったあたりから『これはIOCの方々も見てくれている』というのがありましたし、CEOもIOCから入ってもらったりと、柔軟にごそっと変えたりしていましたね」
※ワールドゲームズ=五輪で採用されていない競技の総合競技大会。オリンピック・パラリンピックの翌年に開催される。国際オリンピック委員会(IOC)が後援している。
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著者プロフィール
永塚和志 (ながつか・かずし)
スポーツライター。前英字紙ジャパンタイムズスポーツ記者。
Bリーグ、男女日本代表を主にカバーし、2006年世界選手権、 2019W杯等国際大会、また米NCAAトーナメントも取材。 他競技ではWBCやNFLスーパーボウル等の国際大会の取材経験 もある。著書に「''近代フットボールの父'' チャック・ミルズが紡いだ糸」(ベースボール・マガジン社) があり、東京五輪で日本女子バスケ代表を銀メダルに導いたトム・ ホーバスHC著「ウイニングメンタリティー コーチングとは信じること」、川崎ブレイブサンダース・ 篠山竜青選手 著「日々、努力。」(ともにベースボール・マガジン社) 等の取材構成にも関わっている。