早田ひな、平野美宇、張本美和が世界卓球で証明 日本女子は絶対女王・中国を打ち破ることができる (2ページ目)

  • 佐藤主祥●取材・文 text by Sato Kazuyoshi

【平野が"ハリケーン"で圧倒】

 マッチカウント1−1で迎えた第3試合、日本は世界ランキング2位(大会開始時点。現在は同3位)の王芸迪(ワン・イーディ)に対して平野を投入。バックハンドでのクロスのラリーが多く、その中での細かい駆け引きが目立った第1ゲームだったが、平野は相手のバックミドルを突き、窮屈な体制にさせて強打を打たせず。得意の戦術、サーブからの3球目攻撃でも確実に得点を奪い、11-8で先取した。

 第2ゲームは再び"伊藤監督"の声がゲームを動かす。「相手はチキータを嫌がっている。強く返さなくてもいいから(王のサーブが)下回転でも、横回転をかけて返すだけでも効果的」と、横回転系のボールに苦戦している王芸迪の隙を見逃さなかった。戦術を託された平野はチキータレシーブによって優勢な展開を維持し、13-11と連取して勝利に王手をかける。

 あとがない王芸迪は、チキータをされないようサーブを変更したり、バックの打ち合いで優勢な平野に対して時折フォアサイドに揺さぶるなど戦術を変更。それでも平野は、"ハリケーン"と呼ばれるピッチの速い卓球を展開し、強力なフォアドライブで打ち返していく。特に、相手がボールに触れられないほどドライブの回転量の多さは際立っていた。

 そのまま12-10で押し切り、圧巻のストレート勝ち。試合後には「パリ五輪代表が決まってから最初の大会で、すごく不安な気持ちでいっぱいだった。その中でチームのみんなや監督に支えられて、最後は中国を追い詰めることができた。今までで一番、手ごたえがあった」とコメント。今大会は3番手で、必ず白星を手にしていた平野の姿は頼もしく映った。

【早田でも太刀打ちできない世界女王の壁】

 日本が優勝に王手をかけた第4試合。早田と孫穎莎、同じ2000年生まれの「黄金世代」対決は、孫穎莎の圧倒的な強さを思い知らされる内容となった。

 ゲーム序盤からエースボールを繰り出していく早田だが、それを上回る衝撃的なカウンターをくらってしまう。特に、孫穎莎が得意とするストレートへのパワードライブは強力で、打ち返すのは困難だ。

 2−11と大差で第1ゲームを落としすと、その後は左右にコースを散らすなどして立て直しを図ったが、すぐさま対応された。孫穎莎はつなぎのボールも回転・コースともに質が高く、つけ入る隙がない。ドライブは打点が高く、返球の際に差し込まれてしまう。終始圧倒され、なすすべなく第2、第3ゲームを奪われて敗北した。早田は「実力不足だな、とすごく感じた。打たれて、取れない。自分が打っても簡単にブロックされる。孫選手にフォーカスした強化練習をやっていかないと、あの壁は超えられない」と世界女王のすごみをあらためて実感していた。

 これまでライバルとして切磋琢磨してきた伊藤も「(孫は)調子がいい。ガンガン打ち込んできてる。緩急つけても全部返ってくる。信じられないぐらい強い」と舌を巻いた。ただでさえ勝つことが厳しい中国勢だが、その中でもズバ抜けた実力と精神を兼ね備えている孫穎莎をどう打ち破るかが、パリ五輪に向けて一番の課題となりそうだ。

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