ホンダがアストンマーティンを相棒に選んだ決め手とは? そのオファー内容は群を抜いていた (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by HRC

【満場一致でタッグが成立】

 アストンマーティンの印象について、渡辺HRC社長は語る。

「アストンマーティンがホンダのパワーユニットを一番高く評価してくれて、『これがないと我々はワールドチャンピオンになれないんだ。だから一緒にやろう!』と言ってくれました。

 4月上旬にはあちらのファクトリーにもお邪魔し、チームの主要メンバー全員とミーティングをさせてもらった。すごくオープンでフェアな人たちばかりで、仕事がやりやすいなと感じましたし、あちらからもこちらに来てもらったりもしました。

 その一方で、HRC内での議論の積み上げもあり、その後に三部(敏宏社長)をはじめとしたホンダの経営陣とも話をしてもらいました。そして最終的には、アストンマーティンとタッグを組むことが満場一致で決まりました」

 もうひとつ気になるのは、出たり入ったりを繰り返すホンダのF1活動は、状況が変わればまたすぐに終焉を迎えるのではないか......という懸念だ。

 これについては、もちろん100%撤退しないと断言することはできないと渡辺社長も語る。しかし、F1活動の継続性は従来に比べて格段に上がっている。

 F1では昨今、PUメーカーにもコストキャップが導入された。2025年までの開発期間は年間9500万ドル(約130億円)、2026年からは年間1億3000万ドル(約190億円)に予算が制限される。

 それに加えて、これまでマクラーレンやレッドブルにパワーユニットを供給しても収益に結びつかず、金銭的にはマイナスしかなかったのが、アストンマーティンとの契約ではその条件面が大きく異なる。彼らがそれだけ勝つためにホンダを欲しているということでもあるが、ホンダにとっても収益の改善はF1活動の継続性に大きくプラスの効果をもたらすことになる。

「パワーユニットサプライヤーとしての権利と地位みたいなところが、今までは相当弱かった。我々は、開発費や製造の出費はあるが収入はない、もしくはものすごく少ないという状態でやっていて、それでは経営が苦しくなってくるとF1を辞めるという判断が選択肢のひとつとして出てきてしまう。

 しかし今回のアストンマーティンとの契約では、パワーユニットサプライヤーとしての権限を少し増やすことができた。今まで(の契約では)チーム運営に対して何も言えなかったり、出費しかなく収支の成立性が非常に弱かったりした。そのところが改善されることで、かなり従来と違った環境になったことが継続性という意味では非常に大きかった」

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