レッドブル・ホンダ、0.7秒差の残酷な現実とフェルスタッペンの心の叫び (4ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by Boozy

 そして、開幕してから6戦が過ぎても差はなかなか縮まらず、いまだ歴然とした開きがあると田辺テクニカルディレクターは語る。

 次戦ベルギーGPからは、予選・決勝を通してパワーユニットの燃焼モード変更が禁止され、実質的に『予選モード』と呼ばれる特殊なモードの使用が制限されることになった。とくにメルセデスAMGはQ3で大きなアドバンテージを得ていると見られているだけに、これが禁止されればレッドブル・ホンダとしては追い風になる可能性が高い。

 ただしシーズン途中の変更であり、あまりに急なFIAからの提言であるだけに、詳細はまだ各パワーユニットマニュファクチャラーと各チームの間で規制内容と監視方法が話し合われている段階だ。来週のベルギーGPに間に合うかどうかは、まだわからない。

 いずれにしても、メルセデスAMGが予選スペシャルモードを使う前のQ1の時点ですでに負けていること、そして予選モードを使わない決勝でもこの差を見せつけられたことを考えれば、その"追い風"が吹いたとしても簡単に逆転できるわけではないことは明らかだ。

「ライバルが何をやっているか、ライバルがどう言っているか。そんなことに目を向けたって、僕らの力でコントロールすることなんてできないんだ。

 それよりも自分たちのことに集中し、柔らかいタイヤだとかブリスターだとかに助けられなくてもコンペティティブに戦えるようにならなきゃいけない。そのためには、僕らはクルマとパワーユニットからもっとパフォーマンスを引き出す必要がある」

 スペインGPを2位で終えたフェルスタッペンは、決勝レース中に叫んだその言葉を繰り返した。

 今のレッドブル・ホンダはまだ、ライバルであるメルセデスAMGと直接対決ができる場所にすらいない。目の前のレースだけでなく今後に向けた開発も、ライバルではなく自分たちのことだけを見て全力を尽くすしかない。

 それが、誰よりも近くコクピットの中でメルセデスAMGとの差を目の当たりにしたフェルスタッペンの心の声だ。

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