父を乗せてウイニングラン。笑顔が忘れられないMotoGPチャンピオン (4ページ目)

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 2006年のシーズン開幕前に、スペインのヘレスサーキットでプレシーズンテストが行なわれた際に、彼に単独インタビューをした時のことだ。子どもの時に憧れていた選手について、彼にたずねた。

 ケニー・ロバーツ、フレディ・スペンサー、エディ・ローソン、ウェイン・レイニー、ケビン・シュワンツ......。20世紀には何人ものアメリカ人ライダーがチャンピオンを獲得してきた。ヘイデンには、母国の彼ら偉大な先達について質問するのがおそらく定番だろう。だが、そんな当たり前の質問は何度も聞かれて飽き飽きしているはずだと思い、「ニッキー、確かあなたはババ・ショバートのファンなんですよね」と問いかけてみた。

 ババ・ショバートは1980年代に活躍した選手で、88年にAMAスーパーバイクのチャンピオンを獲得した。89年からWGP500ccクラスへ参戦を開始するが、第3戦目のレース終了直後に重傷を負い、それが原因で現役活動に終止符を打った。

 世界的には決してメジャーなライダーではない。その名前が、しかも日本人の口から出たことが意外だったのかもしれない。ショバートの名前が出た途端にヘイデンは、「そう、そうなんだよ!」と満面に笑みを浮かべ、饒舌(じょうぜつ)に話し始めた。

 ショバートが世界の舞台で戦ったのはたった3戦にすぎない。だが、アメリカではダートトラックレース(フラットな未舗装オーバルコースで競うレース)を85年から87年まで3年連続で制覇。ヘイデンが成し遂げられなかったグランドスラム(ショートトラック、TT、ハーフマイル、マイル、ロードレースの5種目で勝利すること)を達成した数少ない選手だ。AMAの殿堂入りも果たしている。さらに、アメリカホンダの出身という点で、ヘイデンの先輩ライダーでもある。

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