スーパーフォーミュラ王者が見せた底力。逆転タイトルへ大きく前進 (2ページ目)

  • 吉田知弘●取材・文 text by Yoshita Tomohiro
  • 吉田成信●撮影 photo by Yoshida Shigenobu

 その準備は功を奏し、石浦は好ダッシュを決めてトップで1コーナーを通過。だが、直後に予期せぬ展開が発生する。3番手スタートの松下信治(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が5コーナーでいきなり勝負に出て、石浦は2番手となってしまったのだ。

「スタートはうまく決まりましたが、オーバーテイクボタンを押していたので、それが切れるタイミングで松下選手にボタンを使われてしまった。5コーナーでイン側を少し開けてしまった自分の判断ミス」

 レース早々にトップを奪われた石浦は、松下を追う展開となる。石浦にとってこの状況は、前回の富士ラウンドと同じだ。そのときの経験から、今回はタイヤを労わりながらチャンスをうかがった。

「何度か仕掛けようと近づいてみましたが、タイヤの温度が一気に上がる(性能が落ちそうになる)のを感じたので、タイヤを守って後半で勝負する作戦に切り替えました」

 27周目に松下がピットインするが、石浦はコース上にとどまって終盤にピットストップを行なう戦略をとる。前回の富士ではニック・キャシディ(KONDO RACING)相手に同じ作戦をとったが、逆転は叶わなかった。しかし今回は、石浦自身のペースが安定していたのに対し、ピットアウトした松下は遅いマシンに引っかかってしまいタイムロス。石浦は逆転できるだけのタイム差を築いて41周目にピットインし、トップでコース復帰を果たした。

 レース終盤、シフトダウンがうまくできないトラブルに見舞われ、不安を抱えながらの走行となった。だが、石浦は冷静にトップの座を守り切り、今季初優勝となるチェッカーフラッグを受けた。

「サーキットによって各チームの得意・不得意がありますが、チャンピオン争いを考えると、僕たちはもてぎで優勝しなければならなかったし、(次戦の)岡山でもリードしないといけません。なので、絶対にここで流れを作らなければいけないと思っていました」

 この優勝によって石浦は合計24ポイントとしてランキング3位となり、トップ(キャシディ/27ポイント)から3ポイント差に迫った(前回まで1位の山本尚貴は石浦と同じ24ポイントで2位)。

 次戦の岡山国際サーキットは、石浦が得意としているコースのひとつだけに、ここでも好成績を収めることができれば、自身3度目のチャンピオン獲得に大きく近づくことになる。

 正念場となった第5戦は、王者・石浦が逆転チャンピオンに向けて狼煙を上げた1戦となった。

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