名パイロットの死と、室屋義秀の初優勝。激動のエアレースを振り返る (4ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki

 だからこそ、来年の目標を口にする室屋の言葉は簡潔だった。

「そこはもうシンプル。来年は優勝を狙う」

 今年のレッドブルエアレース・ワールドチャンピオンシップは、室屋と同期デビューのマティアス・ドルダラーが初の年間総合優勝を果たした。来年、年間総合優勝を狙う室屋にとって、今年優勝3回、2位3回と、圧倒的な強さを見せつけたドイツ人パイロットが、最大のライバルとなるのは間違いない。

 室屋は、同期の親友に先を越される形になったが、「今年は、あくまでも3位が目標だったから、気にはしていない」。

 だが、来年は違う。

「デビュー前のトレーニングキャンプの段階から、マティアスにはいつも一歩先を行かれていた。でも、だいたい1年遅れで来ているから、来年は十分行けると思う。マティアスのスキも見えるし、来年は追いつけると思っている」
 
 目指すべき世界一へ――。2016年は室屋の視界に、その道筋がはっきりととらえられたシーズンだったに違いない。

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