【MotoGP】36歳ロッシが完全復活。見えてきた2015年の勢力図 (3ページ目)

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

「今は肉体的にも精神的にも100%で、うまく乗れない理由が見いだせないくらいなんだ。そうなると、あとはモチベーションの問題になる。『もうこれ以上はリスクを犯したくない』とか『そろそろゆっくりとリラックスしたい』とかね。でも、自分の場合はレースが好きだし、世界を転戦しながら戦い続けることも楽しい。ヤマハやチームの皆との仕事は、とても充実しているんだ」

 そして、レースを続ける決定的な理由として、こうも言う。

「勝利の味はいつも格別だ。だから、それを味わうためにずっと走り続けているんだ」

 ロッシはこれまで、ライバルたちと数々の遺恨や確執があり、さまざまな摩擦をコース内外で繰り広げてきた。そして、それを面白がって取り上げるメディアの論調さえも自分の味方につけて、競争相手をさまざまな手法で精神的に追いつめていった。

 もともと仲の悪かったマックス・ビアッジ(98年、01年、02年ランキング2位。12年引退)はもちろん、非常に良好な関係であるかに見えたセテ・ジベルナウ(03年、04年ランキング2位。06年引退)に対しても、ある時期を境に、〈つぶす〉という言葉が妥当なくらいの徹底的な追い込みをかけた。ドゥカティ時代のケーシー・ストーナー(07年、11年チャンピオン。12年引退)とは、相手が向こう意気の強い性格であることも手伝って、熾烈な火花を散らした。

 ところが、現在の最大のライバルであるマルケスとの間には、そのような気配は見られない。第3戦のアルゼンチンGPでは、ラスト2周で激しいトップ争いの最中にロッシのリアとマルケスのフロントが接触して、マルケスが転倒する事態が発生した。前を走るロッシが意図的にラインを変えたことで、マルケスは結果的に転倒してしまったのではないか、とも憶測され、「ロッシとマルケスが冷戦に突入するのでは?」と選手の対立を好む一部メディアがあおり立てようとした。

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