【F1】パワーユニットの性能から読み解く「上位チームの勢力図」 (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 メルセデス製PUの恩恵を受けて躍進著しいウイリアムズも、空力面ではまだ熟成が足りていない。現時点では最高速の伸びが武器になっているが、今後はそれだけでは戦っていけないだろう。

「トップスピードの速さと、ブレーキングからのコーナーへの進入の安定性が僕らの長所だ。でも高速コーナーでは前走車についていくのに少し苦労した。現時点ではそれが僕らの弱点。コーナーからの立ち上がりでもロスしているし、トラクションをもっと強化しなければならない」(バルテリ・ボッタス/ウイリアムズ)

 レース中の燃料消費量をリアルタイムで表示する情報によれば、ウイリアムズ勢2台が最も少なく、それに続いたのがメルセデスAMGのハミルトンだった。逆に、上位勢で最も燃料消費が多かったのはレッドブルだった。

「たしかに僕らは燃費がすごく良い。それはストレートがとても速いことからも分かるとおり、ダウンフォースが少なくて空気抵抗が小さいせいかもしれないね。そのぶんコーナーでは苦労しているけど、他チームはコーナーを速く回るためにそれだけ多くの燃料を必要としているはずだ。燃費が良いのはいいけど、それよりもダウンフォースがもっと欲しいよ」(ボッタス)

 ダウンフォースが増えれば空気抵抗も増し、そのぶん燃費は厳しくなる。空力性能と燃費性能はトレードオフの関係にあるのだ。

 空力性能に優れるレッドブルのベッテルが、終盤に燃費セーブを強いられていたのは、その空力性能の高さゆえだろう。逆に、ウイリアムズはダウンフォースが少なすぎるがために必要以上に燃費が優れている。そんな中、メルセデスAMGは空力性能と燃費性能の最良の妥協点を見出していると言える。

 しかし、これからレッドブルとルノーがPUの熟成を進めてくることは間違いない。

「パワー不足は改良が可能です。たとえば立ち上がりでのドライバビリティが良くなかったり、回転数を上げた時にはターボにノッキングが発生したりといったことで、パワーが下がるんです。しかし、そういった部分を改良すればその症状は改善していきますし、パワーは上がってきます。シーズンが進んでもこのままということはないし、むしろ他メーカーに比べて我々の向上カーブは大きいはずです」(徳永エンジニア/ルノー)

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