【MotoGP】ロッシがヤマハ復帰を決めた最大の理由とは? (2ページ目)

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 実際に、彼らに近い人物によると、ふたりはもう半年ほど直接に口をきいていないともいう。これはある程度の誇張が含まれているとしても、おそらくはロッシ側がプレツィオージを忌避していることは事実だろう。また、プレツィオージがロッシの携帯に電話をしても、応答がないという。このような状態では、ライダーの望むような方向にマシン開発が進むわけがない。

 アウディがドゥカティの経営に参画した後、プレツィオージの留任は7月に決定したが、ロッシが残留条件としてドゥカティに提示した項目にはプレツィオージ更迭が盛り込まれていたとも言われており、おそらくはプレツィオージ留任の段階でロッシ残留の可能性もまた、潰(つい)えたのではないだろうか。古澤は、7月末にドゥカティに招かれてイタリアを訪問した際にロッシにも会っているが、そのときの印象ではすでに離脱の意向を固めていたようだ、と証言している。

 ともあれ、そのような経緯を経て、2013年にロッシのヤマハ復帰が現実となった。冒頭に述べた第11戦の事前記者会見では、ロッシに対して来季の移籍に関する質問が矢のように飛んだ。

 本来ならば、現在のチームへの配慮などから、「今季のチャンピオンシップに集中している」「今の目標は、自分たちが戦うバイクを良くしていくこと」等々の社交辞令的返事に終始するものだが、このときばかりはロッシも真っ正面から次々と受け答えをした。

「今後2シーズンに向けて、自分にとって一番いいバイクを選ぼうと思った。YZR-M1ならいい戦いができる」
「ホルヘ(・ロレンソ)と戦って勝つのはきっと大変だと思う。それでも、愉しいバイクに乗りたかったし、いい気分でサーキットに来て、戦いを楽しめるようでありたいと思った」
「もちろん、チャンピオンを獲ることができれば最高だと思う。しかし、今の段階では自分がまだトップライダーであると確認することが先決。まだ自分は速いのか、まだフロントローを争えるのか、まだ表彰台を争えるのか。こういう2シーズンを過ごしたあとでは、自分にもわからないし、誰にもわからないと思う。自分がフロントローを取れること、表彰台を争えることをまずは実証したい。すべてはそこからだ」
「ヤマハとはずっといい関係だった。来季については100パーセントの信頼を置いている」

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