高松宮記念で評判の2頭 戦国時代のスプリント路線に終止符を打つ絶対王者は誕生するか? (2ページ目)

  • 新山藍朗●文 text by Niiyama Airo

 ところが、その矢先に重賞2連勝。その結果について、競馬専門紙記者はこう評価する。

「2戦とも、いい内容でしたね。道中は先行勢か、そのあとくらいに待機して、直線で一気に差しきる競馬。そうした形が安定していて、京阪杯ではラスト3ハロンで32秒台をマークする鋭い末脚も見せました。

 しかも、どちらのレースもメンバーがそろっているなかで、京阪杯では2着に2馬身差、オーシャンSでは同1馬身4分の1差をつけて勝っています。差がつきにくいスプリント重賞において、2戦続けての完勝。この勢いは本物でしょう。厩舎関係者の間でも『覚醒した』と評判です」

 加えて今回の高松宮記念では、鞍上が名手クリストフ・ルメール騎手に替わる。強力なパートナーを得て、GIの舞台でも過去2戦のような結果を出せれば、スプリント界の王者の座も見えてくるに違いない。

 一方、ルガルの評価も相当高い。前々走の京阪杯ではトウシンマカオに屈したものの、本番との関連性が深い前哨戦のシルクロードSを圧勝し、トレセン内では「トウシンマカオ以上の器」といった声もあるほどだ。

 とはいえ、ルガルは前走が初の重賞制覇。その次戦が初のGI挑戦となると、さすがにその壁は高いように思える。ただ、こうした"飛び級"はスプリント路線ではさほど珍しいことではない。

 実際、昨秋のスプリンターズSを勝ったママコチャ(牝5歳)は重賞未勝利でありながら、初のGI挑戦で頂点に立っている。それに比べれば、今のルガルのほうが"勢い"はある。

 実は、ルガルもトウシンマカオと同様、最初からスプリンターとして育てられてきたわけではない。同馬のこれまでの経緯について、先の専門紙記者が説明する。

「ルガルは、もともと『いい馬だ』と言われていましたが、デビュー戦はダートの1800m戦。その後も、距離は短縮されましたが、3戦続けてダート戦を使われてきました。その理由は、素質は高いものの、馬の完成度がそれに追いついていなかったからです。

 そこから、芝を使えるようになったのは、3歳の春。以降、だんだんと成績も上がっていきました」

 そして、周囲が「馬が変わってきた」と感じ始めたのが、昨年の秋頃。古馬相手のオープン、重賞で健闘を重ね、暮れの京阪杯で2着と奮闘。そこで、陣営はこの馬の能力の高さを再認識したという。

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